日本のCKからの攻撃「トレイン作戦」が、FW岩渕のゴールの伏線になった。相手のマンマークを混乱させる、なでしこジャパンの新戦法。MF宮間あや(30=岡山湯郷)がCKを蹴る直前まで、DFの岩清水梓(28=日テレ)と熊谷紗希(24=リヨン)、MF阪口夢穂(27=日テレ)とFW大儀見優季(27=ウォルフスブルク)がペナルティーエリア内で体を寄せ合って縦並びとなった。さながら子どもの電車ごっこのようだった。

 岩清水が狙いを明かした。「マークもしづらくしてるし、結構マンツーマンでマークしようとする相手を外している感じ」。後半30分のCKでは大儀見がニアサイドに入って、岩清水はファーサイド。熊谷はゴール正面に向かい、阪口はこぼれ球を狙った。ほぼ一緒の並びや立ち位置から、さまざまなパターンがあるようだ。「どこに行くかわかんないっていう方が守りづらい。(相手は)ちょっと混乱している感じがあった。本当にこれはなでしこの強みだと思う。攻撃がCKで終われば、ラッキーという感じ」と話した。

 だが、この「トレイン作戦」を唯一行わなかったのが後半42分の得点時だった。コーナー付近に寄ってきた岩渕を宮間が「今回は中に」と制して蹴った。オーストラリアは“普通のCK”に戸惑った。昨年5月のアジア杯決勝で決勝のヘディングシュートを決めた岩清水にマークが集中。FWの岩渕はノーマークだった。

 宮間は「トレイン作戦」が功を奏したと振り返る。「意外と相手がつききれていない。オーストラリアの高い相手にも結構(ボールを)さわれていた。今後も継続して使っていく。小さい私たちでも勝てるスペシャル法です」。オランダ戦で試し、オーストラリア戦では徹底した。イングランドも体格の良い選手がズラリと並ぶ。連覇への得点量産に出発進行だ。【鎌田直秀】