【エドモントン(カナダ)6月30日(日本時間7月1日)=鎌田直秀】なでしこジャパンMF澤穂希(36=INAC神戸)が、決勝進出に自信を示した。女子W杯決勝に進めば、相手は米国。かねて熱望してきた米国FWアビー・ワンバック(35)との再戦が実現する。米国とは11年W杯、12年ロンドン五輪ともに決勝で当たり、1勝1敗。宿敵との決着をつけるため、まずは準決勝イングランド戦に全力を注ぐ。

 澤は、決勝の地バンクーバーでピッチに立つ姿を思い描いた。イングランド戦の前日練習後、きっぱりと言った。「勝てばメダル確定の大事な試合。やってきたことをしっかり出せば、負けることはない」。その約4時間後、米国が2-0でドイツを破り、決勝進出を決めた。

 決勝で米国に負けた12年ロンドン五輪後、澤は「もう1度、ワンバックと真剣勝負をしてみたい」と言った。あれから約3年。男女史上初の6大会連続出場の「最後のW杯」でチャンスが来た。09年に澤が米ワシントン・フリーダムに移籍し、2人は仲間となり、切磋琢磨(せっさたくま)してきた。日米両チームの大黒柱としての存在感は変わらない。決勝トーナメント進出後は、お互いが途中出場の切り札としてチームを引っ張ってきた。米国が決勝に進み、待ち望んだ再戦まであと1勝に迫った。

 準々決勝オーストラリア戦に勝ってから、澤は報道陣の前で話すことを避けてきた。先発出場への意欲と、途中出場への戸惑いとの葛藤もあったのだろう。ところがこの日、日本代表の10番を背負う誇りや喜びを自分自身で再確認するように口を開いた。

 澤 こういうすごい舞台に立てることは幸せなこと。1人1人の役割、責任を感じてやっている。控え選手が試合を決めるとも思っている。1戦1戦を楽しむ気持ち。緊張も楽しみながら。呼ばれた時のドキドキ感、ワクワク感も楽しんでいる。期待に応えるように結果を出したい。笑顔で終わりたい。

 まずはイングランド戦。初優勝したドイツ大会で唯一負けた相手への雪辱戦でもある。「苦手意識はないけれど、イングランドは個人技も隙はなく、勢いがある。私たちも前回よりみんなの力が融合して、雰囲気の良いチームになっている」と自信ものぞかせた。

 準々決勝当日の宿舎ではチーム最年少の岩渕に「私たち控えの選手が試合を決めようよ。私も頑張るから」と高め合った。決勝弾で結果を出した後輩に負けてはいられない。「夢は見るものではなく、かなえるもの」が澤の信念。仲間と力を合わせながら、ワンバックとの再戦の夢を、またかなえてみせる。

<澤とワンバック>

 ◆初対決 04年アテネ五輪準々決勝で、ともに先発出場。1-1の後半14分にワンバックが決勝点を挙げ、米国が勝利した。

 ◆チームメート 09年に澤が移籍した米女子サッカーリーグのワシントン・フリーダムで同僚に。ワンバックの誕生日にバーベキューパーティーを開催するなど親交は深い。その後も連絡を取り合う。

 ◆祝福 11年W杯ドイツ大会決勝後のピッチでワンバックが「あなたのことを誇りに思う」と澤を抱擁。12年1月のFIFA女子年間最優秀賞授賞式でともにMVP候補にノミネートされて出席。受賞した澤にワンバックは「最高の選手であることを証明した」と称賛した。

 ◆激励 12年4月、キリンチャレンジ杯出場のため来日したワンバックが、3月21日にINAC神戸の鹿児島合宿を訪れ、良性発作性頭位めまい症からの復活を目指す澤を激励した。

<米国との決勝VTR>

 ◆11年W杯ドイツ大会 後半24分に途中出場のFWモーガンに先制点を許すも、同36分に宮間が左足で同点弾。1-1のまま延長戦に突入すると、同前半14分、モーガンのクロスにFWワンバックが頭で勝ち越し点。だが、同後半12分に宮間のCKをニアサイドに飛び込んだ澤が右足で合わせ再び同点とした。PK戦ではGK海堀が2本セーブ。日本がW杯初優勝を飾った。

 ◆12年ロンドン五輪 前半8分にMFロイドに先制点を奪われると、後半9分にもロイドにミドルシュートを決められた。同18分に澤のシュートのこぼれ球から大儀見が押し込み1点を返した。日本はその後も好機をつくったが追いつくことはできず1-2で敗戦。