FIFAランク4位の日本代表「なでしこジャパン」が、W杯連覇に王手をかけた。準決勝で同6位のイングランドに勝利。同点の後半ロスタイムに、相手のオウンゴール(O・G)が決勝点になった。5日(日本時間6日午前8時開始)の決勝は、11年W杯と12年五輪でも頂点を争った米国と対戦。主将のMF宮間あや(30=岡山湯郷)は「W杯は渡さない」と強い決意を示した。

 試合終了と当時に、宮間は気を引き締め直した。米国との頂上決戦に向け、決意を言葉にした。

 宮間 準決勝で勝ったからといって、ホッとした気持ちはない。楽しむという気持ちもない。ロンドン五輪では金(メダル)を持っていかれた。だからW杯は絶対に渡さない。優勝しか考えていない。

 前半33分に宮間のPKで先制するも、その7分後にPKで追いつかれた。後半ロスタイムでのO・Gが決勝点となったのは、男女通じてW杯史上初。頂点を見ているからこそ、劇的な展開にも浮かれなかった。

 4年前の決勝は、PK戦の末に米国を破った。12年ロンドン五輪決勝は1点差で負けた。過去30回の米国戦で90分の勝利は1度だけ。すべては米国に勝ち、頂点に立つために挑戦してきた。「毎日、普通の顔をして、ものすごい努力をしているのがなでしこ。ここ(決勝)に来られて当然。まだまだ満足していない。何よりも結果」。勝負へのこだわりを示した。

 ロンドン五輪で負けて帰国した直後、宮間は主将として金メダルを逃した責任を背負い込んだ。言葉やプレーでのコミュニケーションを重視する宮間が約1週間、口数を減らした。サッカー人生で初めて、下を向きかけた。そんな時、澤からの「あや、またみんなで優勝しよう。米国に勝とう」の言葉が良薬だった。

 今年3月のアルガルベ杯は9位。今大会前は連覇を絶望視する声も耳に入ってきたが、宮間を中心に、しっかり立て直してきた。練習や宿舎で意見を言い合い、試合前の円陣で、仲間を鼓舞する。史上初の6戦連続1点差勝利。1度もリードを許すことなく、再挑戦の権利をつかんだ。

 佐々木監督も「結果は神様しか知らない。幸せをかみしめながら、女子サッカー界の発展に寄与できるような、2011年のような試合にしたい」と意気込んだ。決勝進出決定直後のピッチで、澤は目を潤ませた。それほど個々に思いは強い。ドイツ、ロンドンと1勝1敗。最大のライバル、米国。カナダ・バンクーバーの地で決着をつける。【鎌田直秀】

<米国との決勝VTR>

 ◆11年W杯ドイツ大会 後半24分に途中出場のFWモーガンに先制点を許すも、同36分に宮間が左足で同点弾を決めた。1-1のまま延長戦に突入すると、同前半14分、モーガンのクロスにFWワンバックが頭で勝ち越し点。だが、同後半12分に宮間のCKをニアサイドに飛び込んだ澤が右足で合わせ再び同点とした。PK戦ではGK海堀がキックを2本セーブ。日本がW杯初優勝を飾った。

 ◆12年ロンドン五輪 前半8分にMFロイドに先制点を奪われると、後半9分にもロイドにミドルシュートを決められた。同18分に澤のシュートのこぼれ球から大儀見が押し込み1点を返した。日本はその後も好機をつくったが追いつくことはできず1-2で敗戦。