【バンクーバー(カナダ)3日(日本時間4日)=鎌田直秀】なでしこジャパン最年少のFW岩渕真奈(22=Bミュンヘン)が、米国との決勝戦で主役となる決意を明かした。自身の得点で連覇を導き、日本女子サッカー界の世代交代の象徴となる意欲を示した。13年にドイツに渡って、成長を遂げた「ポスト澤」が、新ヒロインに名乗りをあげた。なでしこは5日午後4時(日本時間6日午前8時)からの大一番に向けて約2時間調整した。

 FW岩渕が、身長155センチの小さな背中に、女子サッカー界の大きな未来を背負った。

 岩渕 W杯が欲しいです。点をとることしか考えていない。私が、なでしこの未来を示すという気持ちでやりたい。世代交代ができていないとか言われていましたが、私がそれをやることでチームとして成長できる。

 08年U-17W杯ニュージーランド大会で8強ながら大会MVPに輝き、世界を驚かせた。08、09年は2年連続でアジア年間最優秀選手に選出され、10年2月に代表デビュー。2戦目には初先発で2得点。華麗なドリブラーは「マナドーナ」と称されたが、大きな期待への重圧や度重なるケガで伸び悩んだ。

 転機は13年。日テレからドイツ2部ホッフェンハイムへの移籍だった。「大人になったなあって思います。海外で1人暮らしを初めて経験し、サッカーも含めて環境が人として成長させてくれた、それがサッカーに直結した」。チームを1部昇格に導き、14年に移籍したBミュンヘンではリーグ優勝に貢献した。今大会前には「私の大会にする」と野望を抱いたが、国内合宿で再び右膝を痛め、出場すら諦めかけたこともあった。

 だが、なでしこを支えてきた先輩たちが22歳を後押ししてくれた。MF澤は同じケガから立ち直った経験をもとに寄り添って助言をくれた。MF安藤に先発出場したかった思いをぶつけると「ブッチが必要になることがあるから。焦らないで」と背中を押してくれた。くしくも大会初戦で安藤が負傷離脱。安藤を再び決勝の地バンクーバーに迎える目標を掲げ、切り札として活躍してきた。

 米国にも大きな借りがある。11年ドイツ大会決勝は18歳で途中出場。12年ロンドン五輪決勝でも終盤に投入され、絶好の同点機を相手GKソロの好守に阻まれた。翌日の銀メダル会見では悔しさから人目をはばからず号泣した。「4年前は緊張。ロンドンでは悔しさしか残っていない。でも今回は楽しみしかない。米国の研究もしています」と笑顔を見せた。

 今大会、準々決勝オーストラリア戦で決勝弾。準決勝イングランド戦でも、ドリブルで果敢に仕掛けて流れを変えた。なでしこの切り札として、米国戦初ゴールで連覇に導き、なでしこジャパンの希望の星となる準備は整った。