ハリルにハリなし!? 日本協会は23日、8月の東アジア杯(中国・武漢)に臨む日本代表を発表した。バヒド・ハリルホジッチ監督(63)は東京・JFAハウスで会見した。いつものように大画面を使いプレゼンスタイルで国内組で編成された23人を発表。その後の会見では何度も泣きが入った。「試合の前には言い訳をするが試合後はしない」と言ったが、いつもの強気一辺倒のハリル節はどこへやら…。意外な一面をのぞかせた。

 1度終了しかけた会見はハリルホジッチ監督の意向で余分に2つの質問を受け付けた。終了までちょうど1時間。いつものスタイルで、いつもの長さ。だが何か違った。「できればカップを持って帰りたい」「もし勝つことができたらかなり良いことだ」。勝利宣言は“条件付き”。4月のW杯アジア2次予選の組み合わせ決定直後に「モスクワ(ロシア大会)まで全部勝つ」と宣言した威勢の良さは影を潜めた。

 質疑応答では相棒の樋渡通訳の日本語訳を待つ余裕があった。これまでのように訳を待たずフランス語でまくしたてることもなかった。落ち着き払っていたのだろうが、とにかく最初から最後まで泣きが入った。

 まずけが人。「予備登録の50人のリストのうち11人がけがをした。20%以上。警告として受け取った方がいい。なぜこんなにもけがが起きてしまったのか」。暗にJリーグの日程やクラブの管理体制をチクリとやった。関連して日程。「大会前に1週間ほど(集まって)練習する時間が欲しかった」。29日にJリーグを戦い、30日に出発。就任時から分かっていた旅程だが言わずにいられなかった。

 そしてアウェー中国で予想される厳しい状況に言及。「参加4チームが1つのグラウンドでトレーニングすることもあると言われた。今のところ決まったのは1回のトレーニング(会場)だけ。グラウンドも悪いという。中国、北朝鮮との試合は普通の試合にはならない。私には何も関係ないが、おそらく政治的な要因も入っていると思う」。最後は気候で「気温は40度、湿度は60~70%はあるという」。キャラが変わったのか、泣きのハリルだった。

 引き分け発進でつまずいた6月のW杯アジア2次予選シンガポール戦の後遺症なのか…。救いは「試合の前には言い訳をするが、試合後はしない。大事なのは結果」と言い切った点。会見中は球際の争いを意味するフランス語「デュエル(duel)」を10回近く連呼。「決闘」とも訳される、この言葉通り同じ東アジアのライバルに面目を保つことができるのか。この振る舞いの変化も、変幻自在のハリル采配、本人が胸を張る「タクティック(戦術)」の1つならいいのだが…。苦境で手腕、真価が問われている。【八反誠】