【武漢(中国)30日】ハリルジャパンが異例の「経由地ランチ」で一体感を高めた。明日8月1日に当地で開幕する東アジア杯に向けて、日本代表メンバーは国内4空港から4組に分かれて出発し、開催地に到着した。4組中3組が経由地の上海・浦東空港で合流し、バスで近くのホテルに移動して昼食をともにした。乗り継ぎまでの約3時間を有効活用し、アウェーの過酷な連戦に備えた。

 ハリルジャパンが上海の地に降り立った。スーツを肩にかけたハリルホジッチ監督がビジネスマンのようにキビキビと歩を進める。さあ、決戦…ではない。ここは経由地。なのに敷地の外に出た。横づけされたバスに乗って約10分。林立する高層マンションの間を抜けると高級ホテルに着く。理由は乗り継ぎの約3時間を利用した昼食会だった。

 前日のJ1で全国に散っていた選手は監督ら本隊の成田をはじめ中部、関西、福岡の4空港から分かれて出発した。直行便がある中部組を除く3組が上海・浦東空港を経由。午前10時44分(福岡)11時17分(関空)11時34分(成田)と次々に到着し、大きな荷物は預けたまま外に出て行った。

 日本代表は海外での乗り継ぎ時は、空港ラウンジで時間をつぶすことが多い。今回も1階の到着ロビーを出てすぐ3階の国内線出発口へ向かえば、ラウンジに入ることもできた。ただし食事は軽食に限られる。体づくりを大事にする指揮官は、試合後の解散も原則、食事を取らせてからと決めているほど。試合翌日の選手の栄養摂取を優先した。

 日本協会スタッフが前日入りしてホテルに要望したメニューは牛、豚、鶏の肉3種をメーンとしたビュッフェ。上海ガニにはありつけなかったものの、関係者は「全体的に少々、辛い味付けでした」。本場の中華の味を堪能したもようだ。

 効果は体調管理にとどまらない。初招集の浦和FW武藤や湘南DF遠藤、さらに追加で初代表となり福岡便に飛び乗った鳥栖MF藤田ら新顔が、早くも国内の常連組とコミュニケーションを取れた。全選手がそろう前のためハリルホジッチ監督の中国での「第一声」こそなかったが、互いを知る貴重な機会。もちろん今回も、円卓ではなく全員が並んで座れる長机だった。

 ちょうど1時間の昼食を終えて戻ると、武漢への搭乗便が1時間半以上、遅延していた。結局、決戦の地に着いたのは成田離陸から約9時間後。練習はせずミーティングを行った。同じ東アジアでも、これだけの長旅。結果的に「上海ランチ」が奏功し、待合室でのストレス軽減と空腹という余計な負担は避けられた。

 ◆東アジア杯 東アジア連盟(EAFF)主催の地域大会。90年に始まったダイナスティ杯が前身で、男子は03年、女子は05年から東アジア選手権として開催されてきた。12年に現在の大会名へ変更。日本は男女ともシード国で決勝大会から登場する。女子は08年大会から2連覇したが、前回13年は韓国に敗れて2位。柿谷、山口らが台頭した男子は前回大会で初優勝を飾った。

<最近の日本代表の乗り継ぎ>

 ▼アギーレジャパン 昨年10月のシンガポール遠征(ブラジル戦)でフードコートを利用。新潟から韓国・仁川空港を経由。滞在時間が短かったため自由行動となり、FW本田らが一般客に交じって食事をした。

 ▼ザックジャパン 乗り継ぎ中は基本的に空港ラウンジを好んだ。欧州遠征の際、経由地のフランクフルト空港で時間が空き、ホテルで休憩したこともある。

 ▼U-21日本代表 昨年1月、U-22アジア選手権(オマーン)に出場。準々決勝で敗れて急きょ帰国便を手配したため、UAEのドバイで乗り継ぎが15時間も。1度、外に出てショッピングモールを散策した。