【武漢(中国)7月31日】男女の日本代表が出場する東アジア杯が今日1日、女子の北朝鮮戦から開幕する。両代表は当地で1時間強の調整。2連覇を狙う男子のハリルホジッチ監督(63)は公式会見で弱気発言を続けたが、前夜は初招集組に対してグループ講義を実施。裏では熱血指導を行っていた。

 きらめくネオンと高層ビル、地元中国を応援する水着美女軍団にも囲まれながら、ハリルジャパンが武漢市内での初練習を終えた。すべて国内組の23人は2日前にリーグ戦出場。前日は移動で終わり、この日も1時間強の調整しかできなかったが、充実した顔で明日2日の北朝鮮戦に備えた。

 その直前、ハリルホジッチ監督は公式会見で弱気発言を繰り返していた。第一声は「選手には疲労がある」。すぐ「それでも、ものすごいやる気と野心に満ちあふれている」と補足したが、今度は「1週間の準備期間があれば」-。先月23日のメンバー発表と同じ言葉で、ない物ねだりした。

 初タイトルがかかる、東アジアの宿敵との初対戦。6月のW杯アジア2次予選で引き分けにされたシンガポールより格上だが「選手の状態を見てみないと」。燃えるべき場面でも慎重に言い回した。だがそれは表の顔。裏では、いつもの弁舌でハリル流を注入した。

 前夜、全体ミーティングを終えると「ハリル教授」は初招集組を呼び集めた。30分間、大学のゼミのような少人数指導。その1人、MF倉田は今季リーグ戦で無得点の状況をダメ出しされたという。「Jの試合を例に、細かい部分まで指導してもらいました。よく見てるな…」。そう感服するほどの指摘の深さだった。

 U-22代表から飛び級のDF遠藤も「お前のプレーは(落ち着きすぎて)40歳に見える、と言われました」と苦笑いしつつ「『ここは攻撃に出ていい』とか状況に応じて説明されました」。今大会は右サイドバックでの起用が濃厚。「そのイメージができた」と、分かりやすい授業となった。

 東アジアの宿敵から、勝利と新戦力を同時にもぎ取る。MF武藤や追加招集のMF藤田ら、ほかの新顔にも1人ずつ細かく注文をつけた。無難だった会見とは裏腹の熱血指導。結果で示す。その野心を誰よりも持っていたのがハリルホジッチ監督だった。【木下淳】

 ◆東アジア杯 東アジア連盟(EAFF)主催の地域大会。90年に始まったダイナスティ杯が前身で、男子は03年、女子は05年から東アジア選手権として開催された。12年に現在の大会名へ変更。日本は男女ともシード国で決勝大会から登場する。女子は08年大会から2連覇したが、前回13年は韓国に敗れ2位。柿谷、山口らが台頭した男子は前回大会で初優勝を飾った。