【武漢(中国)1日】男子の日本代表は今日2日、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)の就任後初の国際大会となる東アジア杯を迎える。連覇へ向けた開幕の北朝鮮戦で、MF武藤雄樹(26=浦和)が初招集初先発することが決定的になった。今季のJ1第1ステージ優勝に導いたアタッカーが、人生でも経験の少ないトップ下で、ぶっつけデビューする。

 純国産型ハリルジャパンの司令塔に「じゃない方の武藤」が指名された。4-2-3-1システムのトップ下。ハーフコートの紅白戦で負傷明けの柴崎に代わって主力組に入り、気温40度近いピッチを駆けた。柴崎との競り合いでボールを奪うと、右サイド深くへ切り込んでクロス。グラウンダーで1トップ川又の足元にピタリと合わせた。ミートせず得点には至らなかったが、崩す形を演出した。

 初の戦術練習。与えられた場所はトップ下だった。ハリルホジッチ監督から「ムトウ、よく見ろ」と細かく指導され「2トップで自分が下がり目ってのはあるけど(完全な)トップ下は初めてかも」。浦和では2シャドーの一角、これまでもFWやサイドMFが多かった。「難しいし、細かい理解が必要」と頭をかきながら「初めての位置でも、初めて組む選手でも、合わせられる選手になりたい。浦和で学んだ判断力を生かせれば」と戦術吸収する。

 デビュー戦ゴールを決めれば史上29人目だ。「デビュー戦だから、ではなく攻撃的な選手として狙っていきたい」。優勝した前回13年大会ではFW柿谷とFW工藤が達成し、柿谷は翌年のW杯ブラジル大会メンバーに食い込んだ。「じゃない方」と比較されたマインツFW武藤でも初得点は2戦目。今日、点を決めれば枕ことばも消えるはずだ。

 前夜は豪快にスベッた。夕食時に行われたFW興梠の誕生会。同じく浦和で同僚の宴会部長、DF槙野からのむちゃぶりで一発芸をやらされた。内容について「スベりすぎたので絶っ対に言いたくない」と顔を引きつらせたが、選手によるとお笑いコンビ「どぶろっく」の物まねで撃沈した。「落ち込んだけど、コミュニケーションを取りやすくなった」と笑い飛ばした。

 出国前、こう覚悟していた。「自分のような人間にチャンスはそう来ない」。武漢に到着した7月30日にはハリルホジッチ監督との個別ミーティングで「前線の選手は、もっとゴールに絡まなければいけない」と指摘された。浦和でチーム最多9得点を挙げていても代表では特別ではない。「点を取ってインパクトを残したいですよね」。世代別を含めても人生初となる代表デビュー戦。ハリルの要求に一発回答し、左胸に輝く日の丸をつかむ。【木下淳】