なでしこも、男も負けた。連覇を狙う東アジア杯の初戦で、日本(FIFAランク50位)が北朝鮮(同129位)に逆転負けした。前半3分にMF武藤雄樹(26=浦和)のデビュー戦ゴールで先制したが、後半33分と43分に連続失点。ロングボール攻撃に、なすすべがなかった。W杯ロシア大会アジア2次予選の初戦シンガポール戦(6月)で引き分けた日本は、またもアジアで勝てなかった。

 1点リードのハーフタイムに、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)の怒号が響いた。「ウサミ! 動き出しをしっかりやれ!」。動きの鈍いエースを全員の前でつるし上げたが、チームに活は入らない。体が重い。結局、宇佐美を後半10分に諦めてMF柴崎と交代。布陣を4-3-3に変更したが「魔法」はかからなかった。後半33分から10分間の2失点で試合をひっくり返された。

 初黒星を告げる笛が鳴ると、ハリルホジッチ監督は持っていたタオルで顔をかきむしった。会見でも開口一番「ガッカリしています」。通訳の間に目頭を強く押さえ、ため息をつく。フラッシュが増すと、カメラマンをにらむように首を振った。「ガッカリ」の言葉を計5回も使い、通訳が終わる前にまくし立て、敗因の矛先を国内組に向けた。

 序盤は理想的だった。開始3分に初招集コンビで先制。DF遠藤のクロスにMF武藤が合わせた。ところが、先月29日のリーグ戦から移動も含めた中3日の日程、30度超の猛暑が選手の足を止める。「デュエル」(フランス語で決闘とも訳される球際の戦い)で敗れて、自陣に押し込まれた。

 「空中戦を支配された」と認めたように戦略でも劣った。相手は後半10分すぎからロングボールを放り込んできた。60分足らずで日本の弱点を把握し、突いてきた。指揮官が「2メートル近い20番に違いを見せつけられた」と感服したFWパクを止められない。後半33分の失点はDF森重がパクに競り負けて同点弾をアシストされ、同43分にはDF槙野が完全に競り負けてパクに逆転弾をたたき込まれた。

 格下に勝てない。6月のシンガポール戦は0-0。海外組不在とはいえ、今度はFIFAランク129位の北朝鮮に逆転負けした。日本史上、最も低いランクのチームに負けた負の歴史だ。キレた指揮官は責任転嫁とも取れる発言を繰り返した。「フィジカルの問題で負けた。準備期間が少なかったからだ。日本のフットボール関係者は疑問を持って、今日起きたことを見てほしい。言い訳ではない。私の方が正しい」。敗因は日本のスケジュールにあると強調したが、条件は敵国も一緒。北朝鮮のキム監督からも「確かに日本より準備はしたが、勝てたのは団結心と闘争心で上回ったから」と一蹴された。

 就任後3連勝は、いずれもホームの親善試合。公式戦は1分け1敗と白星がない。「失望した」と言った監督が失望されない保証はない。残り2戦、言い訳は聞きたくない。【木下淳】

 ▼記録メモ 日本がFIFAランク129位の北朝鮮に敗戦。93年のFIFAランク制定以降、100位以下の国に敗れたのは2度目。前回も相手は北朝鮮で、11年11月15日のW杯アジア3次予選アウェー戦で0-1敗戦。当時の北朝鮮は124位で、今回の129位に黒星はワースト記録となった。