新たなハリルチルドレンが結果を出した。初招集初先発の日本代表MF武藤雄樹(26=浦和)が、代表デビュー戦では史上最速となる開始3分で先制ゴールを決めた。U-22(22歳以下)代表から飛び級で初招集のDF遠藤航(22=湘南)が、ピンポイント右クロスでお膳立て。北朝鮮に逆転負けしたが、新戦力の活躍に光明が差した。

 「じゃない方」の看板を実力で塗り直した。開始3分。ボールが来ると分かっていたかのように、武藤がゴール前に飛び込んだ。遠藤の右クロスに左足を合わせ、ゴール右隅に突き刺した。世代別を含めても初めての代表。ピッチに立って2タッチ目で得点まで持っていった。もう誰もが「武藤雄樹」の名を記憶する一撃だった。

 「航(遠藤)のクロスが良かったので、合わせるだけだった。思いのほか緊張しなかったし、ゴールを決めたことでいいリズムにできた」

 歴史も塗り替えた。代表デビュー戦のゴールは、29人目。その中で史上最速を記録した。「最速でも1点は1点なんでね」。マインツFW武藤と比較され「じゃない方」と言われたが、コツコツと努力を続けた26歳。バーゼルFW柿谷やMF山口がブレークし「国内組の登竜門」といわれる東アジア杯で、名を刻んだ。

 適応能力の高さを見せた。「人生で初めて」臨んだトップ下。それでも「レッズでいつも決めているゴールシーン」をすぐに再現してみせた。仙台時代に元日本代表FW柳沢から盗んだ、オフ・ザ・ボールの動き。DFの間をすり抜け、点で合わせる。徹底した動きで浦和でも今季9得点を積み重ねた。

 反省も忘れない。代表デビュー戦でも浮足立つことなく「チャンスも多かったですし、もう1点決めなきゃいけなかった。もったいない」。大学時代、200段の階段ダッシュを繰り返し、尻回りを強化。走力の源となったが「後半は運動量が落ちてしまった」。歓喜の声がやまないサポーターに負けじと、取材エリアでは1人、大声で話した。「次は勝利につながるゴールがしたい」。残り2試合。代表戦線に生き残るためにも、武藤は次のゴールだけを見続ける。【小杉舞】

 ▼Aマッチ初出場初得点 武藤が北朝鮮戦の前半3分に達成。日本代表史上29人目。そのうち先発出場で記録したのは20人目だが、デビューから3分での初ゴールは、23年5月23日の極東大会フィリピン戦で清水隆三が記録した5分を更新する「デビュー最速ゴール」となった。デビュー戦ゴールを途中出場で記録は過去9人。74年2月12日のシンガポール戦の高林敏夫は、後半22分に初得点を記録したが、出場した時間が不明で、デビューから何分で得点したかの記録は残っていない。