日本協会と千葉県は11日、「県立幕張海浜公園における(仮称)JFAナショナルフットボールセンター設置に向けた基本協定」を締結した。会見に臨んだ森田知事は「本田選手も幕張に練習場を考えてくれているし、盆と正月が一緒に来たような感じ」と破顔した。

 千葉市はプロ野球のロッテ、J2千葉が駅徒歩圏内に本拠を構える。20年の東京五輪ではフェンシングなど3競技の会場にもなる。そして今回はさらに、天然芝2面、人工芝1面、全天候型練習場などからなる日本代表のベースキャンプが、東京五輪に間に合うことを目指し、幕張の浜辺につくられることになる。

 「スポーツを生かした地元の活性化を」という機運も、これまで以上に高まっている。ロッテが日本一になった際には、幕張ベイタウン内で優勝パレードが行われ、当時のバレンタイン監督にちなみ「バレンタイン通り」までできた。千葉市の河野都市局長は「あれは地元の機運が高まってできました。サッカーでも同じことが起きる可能性はあります」という。

 最寄りの海浜幕張駅から合宿地へ向け「サムライブルー通り」にファンが長蛇の列をなす。そんな光景が生まれるかもしれないのだ。同局長は「ブルーというのも非常にいいですね。これを機に、ぜひ千葉市の海に注目してほしいと思っていますので」とうなずく。

 都心からわずか30キロの近郊に、総延長4・3キロの浜が広がるにもかかわらず、千葉には「ビーチ」のイメージがあまりない。今回は合宿地には一般の練習場に加え、ビーチサッカー場もつくられる。これを足掛かりに、ビーチスポーツの聖地を目指す考えもある。

 幕張では今年、海上で小型飛行機のモータースポーツ、エアレースも行われた。浜辺にさらなるスポーツ大会の誘致を行い、花火大会などのイベントも開催する。合宿地周辺に、ショッピングセンターやレストランを設ける案も、すでにあたためられている。サッカー観戦から、食事、買い物、そしてビーチへと、ファンをいざなう“導線”をつくる。

 06年にJビレッジで日本代表がドイツW杯直前の合宿を行った際には、8日間で計6万5100人が見学に訪れた。試算では、最終経済波及効果は14億円にも達した。都心から近く、ファンが訪れやすい幕張なら、さらに多くの経済波及効果を生むことは確実だ。

 同局長は「千葉の浜辺のように、海の向こうに富士山が見える場所はなかなかない」と胸を張る。チームの象徴マリンブルーの向こうに、日本の象徴富士山を望む地は、日本代表にとっても、応援するファンにとっても、最高のロケーションと言えるだろう。【塩畑大輔】