プレーバック日刊スポーツ! 過去の9月1日付紙面を振り返ります。2010年の1面(東京版)は、サッカー日本代表アルベルト・ザッケローニ新監督の就任会見でした。

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 サッカー日本代表のアルベルト・ザッケローニ新監督(57=イタリア)が、3つの旗印で新生ジャパンを最強チームに導く。8月31日、都内で就任会見に臨み、「バランス、コミュニケーション、コンパクト」の3個条を掲げて、チーム強化への意気込みを表明した。現時点での目標を来年1月7日開幕のアジア杯(カタール)での3位以上に設定。今日1日のナビスコ杯東京-清水戦(味スタ)の視察を皮切りに始動する。一方、31日付のイタリア紙ガゼッタ・デロ・スポルトは、同監督がCSKAモスクワMF本田圭佑(24)を高く評価し、ミランに獲得を薦めていたと報道。本田が新チームでもエースに君臨する可能性が高まった。

 目がくらむほどのフラッシュを浴びながら、柔和な表情を崩さずに、日本代表初のイタリア人指揮官が「所信表明」を行った。

 ザッケローニ新監督 クラブで25年ほど監督をやって、セリエAでも優勝した。そこで優勝し、さらに大きな挑戦をするには代表しかなかった。この冒険が終わった時、ザッケローニのジャパン、ザッケローニのサムライがいい思いを残せるようにやっていきたい。

 14年W杯ブラジル大会で6月の南アフリカ大会以上の成績を残すために、ザッケローニの流儀をチームに注入する。まず、自身のチーム作りの根幹として挙げたのは「バランス」だ。「私の非常に攻撃的なイメージがあるかもしれないが、自分ではバランスのいいチームを作れる監督だと思う」と言い切った。

 95年から3季率いたウディネーゼ時代に3-4-3の超攻撃的布陣でイタリア中を席巻。だが、98年からのミラン時代は3バックから4バックへの転換を図るなど、柔軟性がある。「1つのシステムというのはありえない。自然にいくつかのシステムを使い、自動的にできるようにしたい」。常に選手の相性や適性、対戦相手の特色を分析し戦い方を変える手法は、選手の柔軟性や力量も問われるだけに、日本を1つ上のステージに導く可能性はある。

 次に挙げたのはコミュニケーションだ。日本人は積極的な議論が苦手というイメージからか「選手たちにはコミュニケーションを言いたい。これからはオープンにはっきり話し合いたい。黙って説明できないのは好きじゃない」。岡田ジャパンもW杯前の本音を言い合う選手ミーティングが浮上のきっかけとなったが、それを常にチーム内に導入することで、チームに一体感と統一されたコンセプトを植え付けるつもりだ。

 さらに「代表で力を入れたいのはコンパクトなところ。いい結果を取れるチームをつくりたい。いいプレーをするといい結果が出る方が多い」。コンパクトな守備からピッチの横幅をフルに使った攻撃に移るスタイルが持ち味。コンパクトなスタイルを注入する。

 長年ともに歩んできたアグレスティ・アシスタントコーチ、ニスタGKコーチ、アルバレッラ・フィジカルコーチもスタッフ入りが有力で、常にコミュニケーションが取れるように同じマンションに住む予定。「代表のユニホームを着ることは国のシンボル、旗になること。そのユニホームのために、一緒に仕事をして強くなれるように頑張りたい。まずアジア杯はトップ3を狙う」と言うザッケローニ監督に率いられ、日本は4年後のW杯へ向けた新航海に出る。

 ◆アルベルト・ザッケローニ 1953年4月1日、イタリアのエミリア・ロマー二州メルドラ生まれ。83年(30歳)にセリエCのチェゼナティコでプロ監督のキャリアをスタート。97-98年にウディネーゼをリーグ3位に押し上げ、UEFA杯出場。その手腕を評価され、翌シーズンにACミラン監督へ。就任1年目でリーグ制覇した。その後はラツィオ、インテルミラノ、トリノ、ユベントスで指揮した。家族はフルビア夫人と長男ルーカ氏。

※記録や表記は当時のもの