日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)が、強豪クラブの監督の指導法にヒントを得て、W杯ロシア大会アジア最終予選に臨む。スカパー!の「欧州CL特別コメンテーター」を務める同監督は、13日開幕の欧州CLに出場するRマドリード、Aマドリード、マンチェスターCの指導者の選手掌握術を分析。6大会連続出場を目指すW杯への意気込みを語った。日本代表は28日、W杯アジア最終予選のUAE戦(9月1日、埼玉)に向けて埼玉県内で合宿を開始した。

 最終予選に緊張感が高まる中、ハリルホジッチ監督は欧州の強豪クラブの監督の選手掌握術に共感していた。「多くの予算を持ってもチームをつくるには時間がかかる。良い選手を持ったからといって良いチームがつくれるわけじゃない。まったく異なる要素だ」。豊富な資金で戦力補強を繰り返しながらタレント集団をまとめる監督のスタイルは十人十色。欧州CLに出場する強豪の監督の中で、ハリルホジッチ監督が強い興味を示したのが、今季からマンチェスターCを率いるグアルディオラ監督だ。チームの戦いぶりから感じ取るものがあった。

 「すでに新しいスタイルを用意している。まずボールスピードが速く、全員が動く。さらにボールを奪う位置も高い。そして、これまでいた選手にうれしくない発言をした。Y・トゥーレ、ボニ、ナスリ、彼らを(構想外として)グラウンドの外に出した。リスペクトしない人は外へ置いた。就任した人(監督)が見せる野心として素晴らしく必要最低限のことだ」

 25日の日本代表メンバー発表会見で、同様に選手の“追放”を示唆した。鹿島石井監督と衝突したFW金崎を招集せず「この態度は受け入れがたい。先のことは考えていない」と厳しく断じた。W杯をかけたアジア最終予選を戦う上で必要不可欠なのは「チームの和」だと改めて示した。

 チームマネジメントの上で、代表チームとクラブでは選手に対するアプローチの方法は異なるが、対照的な2人に共感する。昨季途中からRマドリードを指揮するジダン監督については「自分の性格をさらけだして、いい雰囲気もたらし選手全員が団結することを見つけた」。Aマドリードのシメオネ監督については「フィジカル的に戦える状態にし、規律と厳しさを伴っている」とみる。アプローチは違っても、選手掌握のためという根底は同じ。その上でチームの操縦法を、こう説明する。

 「各選手が毎試合出たがる。競争を高め、いい雰囲気をもたらすには、パフォーマンスを優先して試合に使わないといけない。コミュニケーションを持って、全員がプレーする可能性があることを説明する。その中でよりよい選手を使う。そのためには監督に経験が必要。けがもあるし、出られる資格のある選手を選ぶ。何人かはうれしくない。でもそれを選ぶ」。

 規律と秩序を守れるのかどうか。ともに戦う選手の「資格」を見極めるため、各選手に配る「日本代表のアイデンティティー」という資料を作成した。それがハリルホジッチ監督のやり方だ。初戦で対戦するUAEの映像は何度も確認した。準備は万全だ。

 アジア最終予選は目の前だが、すでに先も見据えている。今夏の欧州選手権で4強入りしたウェールズとアイスランドを例に挙げて語気を強めた。

 「小国だろうが小さなクラブだろうが、フィジカル的にトップで臨めば良い結果をもたらせる。欧州選手権で小国が見せたことは、我々日本も学ばないといけない。そして相手をリスペクトしすぎる必要はない。どのチームにもコンプレックスを抱かなくていい。自分たちより強いチームにどうやったら勝てるか、その基準を持てば伸びる。どのような国にも勝てる」。

 2年後のW杯ロシア大会でサプライズを起こすため、勝たなければいけない予選がいよいよ始まる。【栗田成芳】

 ◆ジョセップ・グアルディオラ 1971年1月18日、スペイン・サントペドル生まれ。今季からマンチェスターCの監督に就任。過去にはバルセロナとBミュンヘンも指揮。バルサで2度の欧州CL優勝。ブンデスリーガは3季指揮して3連覇を成し遂げた。

 ◆ディエゴ・シメオネ 1970年4月28日、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。元アルゼンチン代表。06年に指導者となり、11年12月にAマドリードの監督に就任した。13-14年シーズンにスペインリーグで優勝。最近の3季で欧州CL準優勝2度。

 ◆ジネディーヌ・ジダン 1972年6月23日、フランス・マルセイユ生まれ。元フランス代表MF。今年1月にRマドリードの監督に就任。トップチームでは初めての監督で、欧州CL制覇に導いた。選手と監督の両方で大会を制したのは史上7人目。

 ◆欧州CL(チャンピオンズリーグ) 欧州のクラブ王者を決める大会。予選を勝ち抜いた10、本戦から出場する22の計32クラブが出場。決勝は17年6月13日。15-16シーズンはRマドリードが優勝した。