【バンコク3日】W杯ロシア大会アジア最終予選で窮地に陥った日本代表10番のMF香川真司(27=ドルトムント)が、思い出の地から再出発する。3日、タイ戦(6日)に向けてバンコク市内で練習を開始。主力組として回復メニューを中心に行った。香川にとって、バンコクは08年6月14日に19歳89日で史上2番目の若さでW杯予選に初めて先発した場所。今予選、初戦となったUAE戦(1日)を1-2で落とした日本だが、自らの活躍でよみがえらせる決意だ。

 気温34度、蒸し暑いバンコクで、香川が汗をたらしながら再スタートを誓った。「現実を受け入れてアウェーの地で何としても勝利する」。試合同様に真っ赤なスパイクを履き、戦闘態勢を整えた。代表選手としては、8年ぶりの地。「ほほ笑みの国」と言われるタイは、代表選手として初めて先発した場所だった。

 平成生まれの超新星として、19歳89日で代表先発デビューしたの08年6月。W杯予選としては史上2番目の若さだった。岡田ジャパンだった当時、大抜てきで注目を受ける中、大久保(現川崎F)の出場停止を受け、トップ下でのチャンスが巡ってきた。W杯アジア3次予選という大事なゲームを、堂々たるプレーで3-0の白星に貢献した8年前を懐かしみながら「タイにはアンダー世代のときからよくきていたんでね。あのときから慣れていましたよ」とほほ笑んだ。

 絶望的なスタートを切った日本の窮地を救うには、原点から再出発するしかない。1日のUAE戦ではトップ下でフル出場し、3本シュートを放つも無得点。前半28分にはゴール目の前での絶好機を外した。「常に想定内のことが起こるわけではない。想定外のことも起こる。厳しいところを耐えて変化を生み出さないといけない」と振り返る。

 ただ課題がある中でも、日本の新たな形には手応えをつかんでいる。優勢の状況で、サイド攻撃だけに偏る傾向があったアジアでの戦い。UAE戦では中央から崩しを図った。攻めきれなかった現実はあるが好感触もある。「中で密集して近すぎるときもあった。シュートまで完結できるときはいい。広げてリズムを変えることも必要」。サイドも使いながら中央の狭いエリアで素早く連動をする。その中心に香川がいる。

 実は日本にとって鬼門となっていた「W杯最終予選2戦目」を突破したのは、香川が主力に定着した4年前が初めて。54年スイス大会予選に日本が初めて参加して以降、予選免除の02年日韓大会を除けば3分け3敗と未勝利だった。その鬼門を破ったのが前回ブラジル大会予選のヨルダン戦で、自身の最終予選初ゴールを含め6発大勝。香川にとっては、吉兆の扉になる。【栗田成芳】

 ◆香川の日本代表初先発 08年6月14日のW杯アジア3次予選のタイ戦(バンコク)で、出場停止のFW大久保の代役として1・5列目に入った。得点は奪えなかったが、後半6分にはミドルシュート、同28分にはFW玉田のパスに合わせるなどシュート3本を放った。後半38分にMF今野と交代するまで83分間のプレー。チームはDF闘莉王、DF中沢、MF中村憲の得点で3-0と快勝した。なお香川の19歳89日でのW杯予選先発は、80年スペイン大会予選の風間八宏の19歳67日に次ぐ史上2番目の若さで、J発足後では最年少記録。