激化する競争を“主力組”が歓迎した。日本代表の海外組が16日、W杯アジア最終予選サウジアラビア戦から一夜明けて所属クラブに合流するため日本を出発した。若手が台頭した、親善試合オマーン戦から続く今回の代表活動で、これまでチームの中心だったFW本田圭佑(30=ACミラン)やFW岡崎慎司(30=レスター)らは出番が少なかった。世代交代の雰囲気も漂い始めるなか、突き上げを受けながらも奮起を誓った。

 午前11時過ぎ。勝利の翌日ながら、羽田空港に現れた岡崎の表情に緊張感が保たれていた。「いい選手が出てくれば、僕らも立場がなくなる」。オマーン戦は後半途中出場で、大一番だったサウジアラビア戦の出場時間はわずか3分程度。1トップで先発したのは26歳のFW大迫だった。勝利という結果に「キヨ(清武)や元気(原口)、サコ(大迫)がいなければ今回の結果はなかった」と素直に若手をたたえた。

 サウジアラビア戦ではFW本田も22歳のFW久保に先発を譲った。2番手だったMF清武がMF香川とのポジション争いに勝ち、攻撃の核になった。本田や香川とともに力をつけたDF長友も、安泰とは言えない。「佑二さん(DF中沢)や俊輔さん(MF中村)がどんな気持ちで(自分たちを)サポートしてくれていたのか分かった」と、若手が台頭するチームでの立場の変化を見定めた。

 目指すのは世代を超えた共闘だ。岡崎は「代表は強ければ強いほどいい。そこで自分が出られなければ、割って入ろうと努力する。そういう立ち位置に戻った」と原点に戻った。長友も「若手が出てきて自分の立場も難しくなるかもしれない。でも、うれしいと思った。競争があってこそ日本代表」と共鳴。所属クラブで出場が少ない自分にハッパをかけるように、後輩の突き上げを歓迎した。

 この日、成田空港から日本をたった本田は、報道陣の問いかけにも軽くうなずくだけだった。好調な若手の勢いと、これまで代表を支えてきた者たちの意地。相乗効果で2つの力が融合すれば、全員の目標であるW杯はぐっと近づく。【岡崎悠利】