プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月22日付紙面を振り返ります。2011年の1面は、10人で逆転4強、香川2発で2度追いつき決勝弾もアシストでした。

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<アジア杯:日本3-2カタール>◇21日◇準々決勝◇カタール

 ザックジャパンの背番号10がついに爆発し、日本を勝利に導いた。日本(FIFAランク29位)はアルガラファ競技場で行われた準々決勝で開催国カタール(同105位)と対戦し、2度のリードを許しながら、3-2で逆転勝利を収め、準決勝進出を決めた。MF香川真司(21=ドルトムント)が今大会初ゴールを含む2得点を挙げ、DF吉田麻也(22)の退場による数的不利を打開。後半44分のDF伊野波雅彦(25)の決勝点にも貢献する全3得点に絡む大活躍で、日本を2大会ぶりのアジア制覇へ一気に加速させた。

 待ちに待った瞬間だった。のどから手が出るほど欲しかったゴールが、窮地に陥ったザックジャパンを救い、準決勝進出に導いた。香川が2ゴールの大爆発。「正直すごい厳しい戦いでしたし、みんないっぱいいっぱいの中での戦いでしたけど、あきらめることなく戦えたのがよかった」。ヒーローは上気させながら激戦を振り返った。

 3試合ノーゴールだった悩める背番号10が、ついにやった。まずは1点リードされた前半28分。FW岡崎のループシュートをゴール寸前で頭で押し込んで同点弾をゲット。「岡ちゃん(岡崎)のゴールと言っていいくらい。チームで取った点だと思います」。この日に第2子の次男拳士ちゃんが誕生した岡崎を祝う「ゆりかごダンス」に加わり、喜びを爆発させた。

 吉田の退場、そして追加点を奪われた直後の後半25分。再び香川が輝いた。MF本田圭のスルーパスを受けた岡崎がDFともつれてこぼれたボールに素早く反応。左足を鋭く振り抜き、再度同点に追いつく値千金の1発。「アウェーでの戦いということで、審判も含めてすごい厳しい戦いでしたけど、チームが一丸となって結果を残せてよかった」。観客席が静まり返る中、本田圭と向かい合い、歓喜の雄たけびを上げた。

 自身初の「海外組」として参加した代表。調整法で悩みに悩んだ。12月下旬に帰国し、27日に代表に合流するまでの間、完全に休養を取ってしまった。すると一気にフィジカルコンディションが低下。取り戻すために、時間がかかった。1次リーグ3試合は次第に状態は上がったが、ノーゴール。「海外組の人はこのようなことを繰り返してきた。難しさを感じました」。苦悩とともに新たな経験を経たことで「今は完全にコンディションが戻った」とたくましさを身につけた。

 代表を引退した横浜MF中村俊輔に続く、背番号10の重みを感じながら、従来の司令塔スタイルではなく、ドリブルで得点に絡む「自分色」に染めることを目指した。終了間際の伊野波の決勝点は、ペナルティーエリアの中で香川がドリブルで切れ込み、そのこぼれ球から生まれたもの。「まだまだ納得できないんで。でも得点できてホッとはしています」。全3ゴールに絡む活躍にも満足はしていないが、それでも21歳の若者は安堵(あんど)感を素直に表した。

 まだ戦いが終わっていないことは分かっている。準決勝の対戦相手はイランか韓国。今日22日に決まるが、10月のソウルでの親善試合で引き分けた韓国について「アウェーでは引き分けているので絶対勝てるように切り替えてやっていきたい」と話した。04年の中国大会は中村俊がMVPに輝き、日本が優勝。今大会は「新生10番」香川が日本に栄冠をもたらす。【菅家大輔】

◆日本代表10番の初得点

 ▽ラモス瑠偉 93年5月5日、アメリカW杯アジア地区1次予選スリランカ戦(UAE)。前半31分の先制点。日本が6-0勝利。

 ▽名波浩 96年12月9日、アジア杯(UAE)ウズベキスタン戦。前半7分の先制点。日本が4-0勝利。

 ▽中村俊輔 03年3月28日、親善試合ウルグアイ戦(国立競技場)。前半23分にPKから1-1とするゴール。2-2で引き分けた。

 ◆アジア杯の数的不利からの逆転 04年中国大会の準決勝バーレーン戦で激戦を制した。前半6分に先制を許し、同40分にはMF遠藤が退場処分を受けた。後半に反撃し、10分までに2点を入れて逆転。その後の2失点で再び逆転を許したが、後半ロスタイムにDF中沢が頭で起死回生の同点弾。延長戦に持ち込むと、同前半3分にFW玉田が左足で決勝ゴール。決勝でも開催国の中国を3-1で破って優勝した。

※記録と表記は当時のもの