プレーバック日刊スポーツ! 過去の1月27日付紙面を振り返ります。2000年26面(東京版)は、カズが大親友の中山雅史との「友情関係」一時返上を報じています。

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 FWカズ(三浦知良、32=京都)が大親友の中山雅史(32=磐田)との「友情関係」を一時返上した。

 26日、日本代表合宿が行われている福島・Jヴィレッジでの会見で「今回は仲良くしてない」などと発言、ほとんど会話をかわしていないことを明かした。

 過酷な代表残留争いに1993年のドーハの悲劇を経験した同世代の旧友にも、新たなライバル意識が生まれた。

 才能にあふれた五輪世代(23歳以下)ではない。フランスW杯でエースの座を強奪した城でもない。カズのライバルは同世代の大親友だった。

 「今回はゴン(中山)とあまり話をしていない。お互い自然と意識して仲良くしていないんだ。サバイバルだからね」。26日の会見でカズは真顔で言った。この日の練習でも中山とパス回しをしたが、言葉を交わすシーンは少なかった。過酷な代表残留争いに、友情を一時的に中断していた。

 合宿最終日の29日に五輪代表とA代表から選別された新生日本代表(22~25人)が発表される。だから五輪世代とベテラン組の世代闘争ばかりが注目されていた。

 しかし、その前に同世代の戦いがあった。FWの枠は4(城は除く)しかない。32歳の大ベテラン2人がそろって代表に選出される可能性は低い。カズはそれを十分意識していた。

 中山とは93年10月のW杯最終予選のドーハの悲劇以来、親友関係が続いている。97年11月のW杯最終予選カザフスタン戦では、中山が出場停止のカズのユニホームを下に着て試合に臨んだ。

 しかし、そんな厚い友情よりも今は代表復帰へかける執念の方が上回っていた。「日本代表にこだわりがあるし、そのこだわりに責任を持ちたいからね」とカズは話した。

 万全の準備で22日、福島合宿入り。前日21日まで沖縄で1週間合宿して1日5時間も練習した。メニューには新たにダンスも取り入れた。動きに柔軟性を持たせるのと重心移動をスムーズにするのが目的だった。32歳11カ月という年齢になっても、向上心は失っていない。これも日本代表にかける意欲の表れだった。

 戦術練習では昨年のシドニー五輪最終予選で得点王を獲得した平瀬(鹿島)と初めて2トップを組んだ。これまでならカズが若手に一方的に指示を出していた。しかし「平瀬の方がトルシエ戦術に慣れているので、彼に聞いたり、彼の動きを見て判断することもあったよ」。1年8カ月ぶりの代表復帰へカズはあくまでもどん欲だった。

 

 ◆カズ-中山コンビ 

 ▼アシスト 93年10月の米国W杯アジア最終予選。中山にとって初の国際Aマッチフル出場となる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦の後半6分、中山のゴールをカズがアシストした。続く韓国戦では2人が2トップとして初先発し、90分以内としては9年ぶりの韓国戦勝利に貢献した。

 ▼ドーハの悲劇 米国W杯アジア最終予選のイラク戦。カズ、中山のアベックゴールで2-1とリードしたが、ロスタイムに失点して出場権獲得を逃した。

 ▼カズのユニホーム着用

 フランスW杯最終予選カザフスタン戦。2年5カ月ぶりに代表復帰した中山が出場停止だったカズのユニホームを下に着て出場。

 ▼ジョホールバルの奇跡

 フランスW杯アジア第3代表決定戦の前、カズと中山は、2人だけで滞在していた宿舎近くの寺院に必勝祈願に出向いた。3日後には日本の初のW杯出場が決まった。

 ▼激励電話 98年6月のフランスW杯ジャマイカ戦の前夜、代表落ちして帰国していたカズが中山へ激励の電話。ジャマイカ戦では中山が日本人初のW杯ゴール。

※記録と表記は当時のもの