FW久保裕也(23=ヘント)が新エースへの第1歩を踏み出した。本田を押しのけて最終予選2試合連続で先発すると、難敵UAEから1得点1アシスト。前半14分、右サイドでDFの裏を突き、角度のない位置から右足で決めると、後半7分には最も遠い位置にいたMF今野に、利き足と逆の左で完璧なクロスを送った。代表初ゴール&アシストに「やっとチームに貢献できた」。前回サウジアラビア戦で負傷交代した借りを返し、ようやく笑えた。

 リオ世代の悲運の点取り屋だった。昨夏の五輪。負傷者が続出した当時所属のヤングボーイズから参加を拒まれた。交渉が破談し、夢が断たれ、連絡を受けた関係者の電話に泣き声だけが響く。同じ時期、実はヘントから最初のオファーが届いたが、こちらも負傷禍を理由に移籍を認められなかった。「もうA代表しかない」。2つの道が断たれ時、不思議と開き直れた。

 スイスでは「日本人はラストパスだけ出せ」と一時シュート禁止令すら出される偏見も受けたが、殻を破った五輪後の16-17シーズン前半戦は25戦12発。半年待ったヘントでは「より自分に得点を求めてくれる。練習量も多く、すべて自分に合う」と7戦5発。計17点は今季の海外組最多だ。

 初招集は高校3年だった12年。5年後の初ゴールに「自分には必要な時間だったと思う。これからは本田さんだけじゃなく、上の世代みんなに挑んでいかないと。まだ追い越せるとは思っていない」。まず先発定着へ、強い目力で28日タイ戦を見据えた。【木下淳】