日本代表の3月のW杯アジア最終予選2連勝を、監督として歴代最多J1通算270勝の実績を誇る西野朗技術委員長(61)が、しっかりとアシストしていた。

 4日、東京・JFAハウスでの技術委員会後、同委員長がUAEとタイの両戦を総括。その中で、ハリルホジッチ監督からの要望で、2戦ともハーフタイムに前半の攻守のバランスを伝えていたことを明かした。

 「ここ2試合は(会場の)『上から見てポジションのバランスを伝えてくれ』と言われた。口頭で伝えるのは難しいのでボードがある? と用意してもらいました」と明かした。

 戦術ボードも使って分析。UAE戦は相手左サイドの穴を指摘した。「向こうの左サイドバックとセンターバックの距離が離れていた。多分ベンチからだと(俯瞰=ふかん)できないので細かい距離感は分からないはず」と振り返った。

 タイ戦はMF山口蛍、DF酒井高徳で組んだボランチのバランスの改善点を指摘。加えて「原口がいつになく『原口“元気”じゃなかった』」と左FWが本調子ではないと指摘。後半、ハリルホジッチ監督は原口を交代させている。

 2連勝、B組首位の陰の立役者は“西野ボード”だったともいえるが、いつもダンディーな同技術委員長は「伝えただけ。予測とか展望はなし」と、自身の経験から監督の判断を最大限尊重し、客観的事実を伝えただけだと、事もなげにサラリと振り返った。

 これまでは現場への気遣いから極力、ハリルホジッチ監督やチームとは距離を置いていたが、技術委員長就任から1年が経過。日本がW杯アジア最終予選の勝負どころを迎え、請われて後押しすることとなった。次戦6月のイラク戦(アウェー)以降もハリルジャパンを、J1最多勝の鋭い戦術眼がバックアップする。