コロンビアではコンドルの格好をした鳥男ことエル・コレ(65=本名非公表)が知られた存在だ。89年に在住するバランキージャでW杯南米予選が開催されるようになったことがきっかけで、サポーターの第一人者になると決意。当時36歳で家族もいたが、営業マンを辞め、アンデス山脈の象徴で、国鳥のコンドルの格好で代表を応援する道を選んだ。弁護士を目指して大学にも5年間通い、卒業まであと2カ月だったが、迷いはなかった。妻や2人の子供も反対しなかった。

 「サッカーが好きだったし、コロンビアの素晴らしいイメージを世界に伝えたかった。私は相手の悪口は絶対に言わないし、酒も飲まない。世界一のサポーターを目指しているんだ」

 W杯デビューは90年イタリア大会。飛行機の往復切符のみで無一文で現地入り。機内で寄付金を募り、公園や海岸で寝泊まりして会場を転戦した。「あの時は本当にお金がなくて、3日間食事ができず、1週間風呂にも入れなかった。でも幸せだったよ」。

 スタジアムでは仲間3人によって客席の最前列からロープで宙吊りされる形で羽ばたいていたが、1次リーグの西ドイツ戦でコロンビアの同点ゴールが決まった瞬間に仲間が3人とも握っていたロープを手離して万歳してしまい、エル・コレは約3メートル降下。3人ともロープを体にも巻きつけていたため落下は免れたが、その影響もあってか、98年フランス大会以降、FIFAから宙吊り禁止令を出されたという。それでも、コロンビアがW杯出場を逃した時でも必ず「参戦」。今回のロシアで8大会目になる。

 国旗のカラーである赤、黄、青の3色をふんだんに使った特注の衣装は1着約11万円で現在7着目。洗濯にも約2000円がかかる。W杯イタリア大会後、地元ラジオ局が番組内でスポンサーを募り、地元企業2社が名乗りを挙げた。W杯や南米予選で遠征費のサポートを受け、衣装に企業名を入れてPR。今ではスポンサー企業で仕事もしているという。

 2大会連続で1次リーグで日本と対戦することになったが、当然コロンビアの勝利を熱望する。「あの時は1次リーグ突破がすでに決まっていたから安心して応援していたけど、まさか4点も取るとは思わなかった。でも、日本はW杯の常連だし、ポテンシャルが高く、アジアで一番いいチーム。今回も勝って欲しいけど、スコアは2ー0じゃないかな。コロンビアの選手はほとんどが海外組で駆け引きも知っているし、スター性のある選手もいる。同じ監督が長いことチームを率いているのも強み。今大会は最低でも4強。できれば決勝までいってほしいね」。

 鳥男は死ぬまで続けるというエル・コレ。ロシアの地でもコロンビアの勝利を信じ、スタンドで羽ばたき続ける。【福岡吉央通信員】