日本が、ワールドカップ(W杯)ロシア大会(6月14日開幕)の真っ最中に法廷でも闘う可能性が出てきた。日本代表監督を4月7日付で解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が11日までに、名誉回復を求めて日本協会を訴える意向を固め、今月中に民事訴訟を起こす準備に入った。第1回口頭弁論期日は6~7月になる見通し。大会中に前監督との係争が始まるという、異例の場外乱闘勃発の危機に直面した。

 訴えてやる! かねて訴訟を示唆していたハリルホジッチ前監督が行動に移した。「名誉回復につながる謝罪」「解任経緯の真相解明」を求め、日仏の資格を持つ金塚彩乃弁護士(40)ら担当者が東京地裁に提訴する準備を開始。手始めとして、10日に日本協会へ質問状を送付した。金塚氏は「田嶋会長は『専権事項』として契約解除し、理事会を通さなかった。この手続きが適法か、複数項目で多角的にサッカー協会の見解を問う内容になっています」と説明。1週間後の17日を回答期限に設定した。

 前監督サイドは、この反応を待ってから今月末までに東京地裁へ訴状を提出する方針だ。4月20日に双方の代理人が都内で面会したが、20分ほどで終了。法務に絶対の自信がある協会側は「契約に基づいた解任」との姿勢を崩さなかった。“門前払い”され、業を煮やした前監督側が民事訴訟に踏み切る方針を固めた。

 訴訟が成立すれば、協会側は対応せざるを得ない。同月27日の会見でハリルホジッチ氏が公にできなかった根拠も、法廷では明示される可能性がある。金塚弁護士は「ハリルホジッチ氏とは(インターネット電話の)スカイプ等で連絡しており、今も『コミュニケーションには自信がある。問題などなかった』と話しておられます」。汚名返上に闘志を燃やしているという。

 問題は時期だ。金塚氏は「できれば早く」と訴状の提出を急ぐ構えで、順調に手続きが進めば、第1回の口頭弁論期日は6~7月になる見通し。「意図的ではありません」と補足も、W杯と完全にバッティングする。

 慰謝料など金銭面の要求はしないが、名誉回復への執念はすさまじく、ハリルホジッチ氏には再来日して法廷に立つ準備がある。選手の出廷は「難しい」(金塚氏)ため、どう「コミュニケーション」の有無を証明するのか注目される。日本協会は「文書(質問状)の受信を確認した。本件は弁護士に任せているためコメントは差し控えたい」。訴訟が不調に終わればFIFAの仲裁機関に訴えることも検討していく。