日本サッカー協会が、日本代表の次期監督候補の軸にしているワールドカップ(W杯)ロシア大会の森保一コーチ(49)に就任の意思確認を行ったことが10日、分かった。日本人路線の継続を再確認した協会が同コーチの昇格を検討し、水面下で可能性を探っている。代表監督を推挙する技術委員会は20日に開催され、それまでに調整を進める。森保コーチは20年東京五輪(オリンピック)代表で、A代表との兼任監督として就任を要請することになる。早ければ26日の理事会で決まる見通し。

 もう1つの森保ジャパン作りに向けた動きが水面下で進んでいる。日本協会は20日の技術委員会で代表監督に求められる基準、候補者をまとめ、全て整えば森保氏へ就任要請する運びだ。その際は東京五輪代表監督と兼務となる。協会側は既に非公式な形で森保氏と接触し、意思確認したもようだ。W杯視察でロシアに滞在中の関塚技術委員長が帰国する13日以降に内部で話し合いを進め、正式オファーを出す準備に入る。

 国際サッカー連盟(FIFA)理事でもある日本協会の田嶋会長はこの日、W杯準決勝以降を視察するため渡欧。出発前の成田空港で「慌ててやるつもりはないが、ズルズル8月や9月まで遅らせる必要はないと思います」と、新監督の決定時期に言及した。

 東京五輪代表である現U-21(21歳以下)日本代表とA代表の活動が重なった場合のスケジュール、指揮体制などクリアすべき点は多いが、同じ指針、基準で一気の強化、底上げと世代交代を任せられるメリットもある。兼務となれば00年シドニー五輪と02年W杯日韓大会で結果を残したトルシエ氏以来となる。

 22年W杯カタール大会に向けた次期監督の選定は、ロシア大会中の日本の4試合と同時に進行。「日本人路線の継続」は5月の技術委員会でも話し合われ、ほぼ全員が賛成した。当時から森保氏は候補の1人で、兼任案が早くから浮上。西野監督がW杯でも日本人の感性とコミュニケーションを生かし、チームを短期間でまとめたことが大きな後押しにもなり「日本人路線」が確実な状況となった。

 開幕前の低評価を覆す形で16強入りした西野監督の手腕に対する評価が急上昇し、日本協会は続投を要請。ただ、西野監督は断った。田嶋会長も慰留せず方針を切り替えた。森保氏は5月から後任候補の1人で、今回仮に西野監督が続投していても、東京五輪後にバトンタッチする案もあった。W杯で西野監督を支え、世界の強豪と渡り合ったチームの中心にいたことで経験値も高まった。この経験を次世代に伝える「継続性」という観点からも、後任の軸とする判断に至った。

 技術委員の中には依然「西野監督に再オファーを出すべきでは?」との声もある。ただ、田嶋会長はこの日「僕と西野さんの間では99%はないと思ってます」と否定的に語り、事実上選択肢から消えた。最優先されるのは森保氏の意向と、それを支える体制の構築となる。

 ◆森保一(もりやす・はじめ)1968年(昭43)8月23日、長崎市生まれ。長崎日大高から87年に広島の前身マツダ入り。守備的MFとして京都、広島でもプレーし、03年に仙台で引退した。J1通算293試合15得点、日本代表でも国際Aマッチ通算35試合1得点。04年に指導者に転身。07年U-20W杯日本代表コーチや広島、新潟のコーチをへて12年に広島監督に就任。12、13年の連覇と15年の計3度リーグ優勝。17年7月に退任し、同10月に東京五輪代表監督に就任。ハリルホジッチ監督の解任に伴い、西野監督のもと4月にA代表コーチにも就任しW杯ロシア大会も経験した。家族は夫人と3男。愛称「ポイチ」。174センチ。