【アブダビ18日】日刊スポーツのサッカー担当記者が独自の視点で分析する「Nikkan eye」。開催中のアジア杯UAE大会からの第3回は、逆転勝ちで1位突破を決めたウズベキスタンとの1次リーグ第3戦から。キーマンとなった潤滑油、MF乾貴士(30=ベティス)の仕事ぶりから、小杉舞記者が日本代表を読み解く。

逆転勝ちしたウズベキスタン戦。先発10人を代え、第1、2戦で出番がなかったいわゆる「控え組」で臨んだ。1次リーグ第3戦で先発大幅入れ替え、といえば記憶に新しいのが昨年のW杯ロシア大会ポーランド戦。相手も状況も違うが、最後はボール回しに終始し敗れ、結果は出なかった。

ロシアでは経験豊富な選手がほとんどで、どのような状況でも、ある程度割り切る大人な対応ができていた。だが、今回は違う。経験の浅い若手が多い。DF吉田や長友のように先頭に立つ選手もいれば、間に立つ選手も必要になる。主力と控えをつないだのがロシアで主力、今回は控えという唯一の立場のMF乾。大事な役目を担ったと思う。

主力で臨んだ初戦トルクメニスタン戦。残り10分でリードは1点、交代枠が2つも残る状況で、森保監督は動かなかった。長期戦を見据えたベンチワークでも「どうして?」と感じる控え選手もいる。森保ジャパン初招集の乾も、初めての試合で疑問が残ったようだ。試合後、いち早く疑問を解消するため指揮官と直接話した。「理由が分からないままと、分かったのでは違う」と乾。森保監督の答え「試合を経験して戦術を浸透させ、選手同士の感覚もすり合わせられる」を聞き「選手全員が納得できたのではないか」と理解した。起用法への直談判は、1歩間違えれば造反とも捉えられかねない行動。実は、直前に指揮官を広島時代からよく知る塩谷や青山にみっちり“取材”。自分の中で整理してから、決して溝ができないよう繊細に行動し対話していた。

ウズベキスタン戦後、出場しなかった主力の長友が「誰が出ても、いいプレー、いい試合ができると証明した試合」とたたえた。やっと出番を得て同点弾のFW武藤は結果に「チームとして底上げにつながると思う」と自信を得た。森保ジャパン立ち上げ当初からの合言葉である「融合」。潤滑油の乾が初めて招集された今回こそ、本当の意味で結束するチャンスではないか。そして、控え組がポジションを奪った時、チームはより強固なものとなるはず。変化はこれから。決勝トーナメントが楽しみになる一戦だった。【小杉舞】

◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年大阪本社入社。1年目の秋から西日本サッカー(G大阪や神戸、広島、名古屋、J2京都など)担当。