【アブダビ(UAE)1月31日】これぞ日本の主将だ。アジア杯日本代表DF吉田麻也(30=サウサンプトン)が、2月1日のカタールとの決勝戦に向けた前日会見に森保一監督(50)と登壇した。準決勝UAE-カタール戦では両国が国交断絶中とあり、試合中に物が投げ込まれた。海外記者の関連質問に、吉田はフェアプレーの重要性とアジアを代表してカタールと好試合をすると英語で宣言し、報道陣から拍手を浴びた。冷静かつ頼れる新主将に率いられた日本が、2大会ぶり5度目の優勝に挑む。

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少しの苦笑いとせき払いで呼吸を整えると、吉田はゆっくりと英語で語り始めた。

前日会見の最後の質問。海外記者から「準決勝でカタールを邪魔する行為があった。明日もカタールに精神的重圧がかかるが日本代表選手としてどう思うか」と問われた。開催国UAEとカタールは国交断絶中で、政治的背景も絡んだ難しい質問だった。

「AFC(アジアサッカー連盟)がコントロールすべき問題」と前置きし、言葉を紡いだ。

吉田 アジアを戦うことにおいて精神的な集中を切らさないことが大事。この大会は全世界に配信されている。そこで、ばかげたことは起きないでほしい。

詰めかけた報道陣が静かに耳を傾けはじめる。「スポーツマンシップ、フェアプレーを象徴する出来事」と準決勝終了間際に小競り合いをしたイラン選手と試合後の宿舎で遭遇して謝罪された話を挟んで続けた。

吉田 自分たちはアジアを代表していて(大会キャッチフレーズの)「BRINGING ASIA TOGETHER(共にアジアを高みへ)」で分かるように、そういう面で代表する立場でもある。アジアからいいサッカーを世界に見せるのが重要。明日は両チームが良い試合をすること。日本だけじゃない。アジアを代表してやりたい。

約3分間の英語スピーチ。自然と生じた万雷の拍手に、少しほおを緩めた。

昨年ワールドカップ(W杯)ロシア大会後、代表引退を受けて涙したほど敬意を払う長谷部から主将を引き継いだ。主将マークを巻いて臨んだ初の公式戦。22歳だった11年の前回優勝時と違い、先頭でチームを率いてきた。

決勝戦は先発全員が初の海外組となる見込み。吉田は史上初のアジア杯3大会連続得点も期待されるが「スタメンを見ても全員が欧州でプレーするようになった。そこの精神的な成長は日本の財産になっているんじゃないかなと思います。心強いなと感じました」と仲間への信頼を口にした。

「ここで結果を出せるかで、スポーツとしての人気、成長に関わってくる。その責任を負ってプレーしている。もっと一緒にいたいと感じる仲間なので、このチームで勝ちを勝ち取ることができれば新たな1歩になると思います」

吉田率いる侍たちが、威風堂々と決勝の舞台に立つ。【浜本卓也】