サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」がJヴィレッジ(福島・楢葉、広野町)に帰ってきた。

20日、27日から米国で行われる国際大会シービリーブス杯の事前合宿を開始。11年3月11日の東日本大震災以後、男女を通じて初めてA代表が同施設のピッチに立った。震災直後の11年7月にワールドカップ(W杯)ドイツ大会で世界一を勝ち取り、日本中に勇気を与えたなでしこ。W杯イヤーに、福島の地から再び世界一への道を切り開く。

思い出のピッチが包み込むように、なでしこたちを迎え入れた。選手が立ったのは、約3年前まで原発事故の対応拠点として駐車場に姿を変えていた場所。青々とした芝生が元通りの姿で広がり、約1時間半の選手の調整を支えた。福島出身の高倉監督も日本代表監督として凱旋(がいせん)。整備されたJヴィレッジの姿に驚き「ここでいい準備をして力強くプレーし、東北でまだまだ苦しんでいらっしゃる方の力になんとかなれるように」と願った。

東日本大震災直後の11年6月から7月にかけて行われたW杯ドイツ大会では、厳しい戦いを乗り越えて初優勝。なでしこたちの最後まで諦めずに戦う姿は多くの被災者を勇気づけた。あれから約8年がたち、Jヴィレッジは4月に完全営業再開を見込めるまでになった。そんなタイミングで6月にW杯フランス大会を戦うなでしこが帰ってきた。高倉監督は貴重な国内調整を福島で行えることを喜ぶ。「感慨深いものがある。ここで準備をして(大会へ)向かっていることはうれしい」と笑顔をみせた。

なでしこが最後にJヴィレッジで合宿を行ったのは09年11月で、実に約10年ぶり。男子も02年W杯日韓大会に臨むトルシエジャパンが、たびたび使用していた。20年東京五輪では男女サッカー代表が事前合宿を行うことが決定。昨年7月にJヴィレッジで行われた一部営業再開の祈念式典の際には、出席した森保監督が男子A代表の利用も示唆するなど、日本代表の前線基地として再生しつつある。

8年前の感動を再現する。高倉監督は「前のチームが成し遂げた優勝という素晴らしい結果にたどりつけるように」と宣言。いてつくような東北の寒さも吹き飛ばし、福島の地から再び頂点を目指す。【松尾幸之介】

◆Jヴィレッジ 1997年にオープンした日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンター。福島県の楢葉町と広野町にまたがる約50ヘクタールの敷地内にグラウンド12面(当時)や屋根付き練習場、宿泊施設を備える。東京電力が福島第1原発の増設計画に伴い、地域振興として福島県に寄贈した。元イングランド代表のボビー・チャールトン氏が命名。02年W杯日韓大会ではアルゼンチン代表がキャンプ地として使用。