鹿島アントラーズの元日本代表DF内田篤人(32)が、23日のガンバ大阪戦(カシマスタジアム)で現役ラストマッチを迎える。

シーズン半ばで、電撃的に引退する「ウッチー」へ-。日刊スポーツでは、特別な絆で結ばれた人たちからの、惜別メッセージをお届けする。

連載第1回は同世代の盟友、日本代表主将のDF吉田麻也(31)からの「贈る言葉」です。

(取材協力・ユニバーサルミュージック)

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本当にさみしいけど、引退は本人が決めること。しょうがない。もうこれ以上、「頑張れ」なんて言えない。けがは本当に怖い。よく頑張ったと思う。

サッカー王国の、ベタベタの静岡人だから、プレーの理想もプライドも高い。けがもあって、現実とのギャップに苦しんでいるなと思っていた。まぁこんなもんだって、折り合いをつけて、できる範囲で楽しみながら長くやる選手も多いけど、そういうタイプじゃないから。

本人も悔しい引退だと思うけど、同じように悔しい。もし万が一、Jリーグに戻ってから対戦した若い選手が「内田篤人ってこんなもんなの?」って、1ミリでも思ったとしたら、CLでベスト4になった11-12年シーズンの映像を見てほしい。あのシーズンのシャルケのCLホームゲームは、スタジアムで全部見た。どれだけすごかったか、今すぐ日本に戻って全員に説明して回りたいくらい。

普通、速い選手が目の前に来たら、縦のコースを切って(=遮って)対応するのがDFの鉄則。でも、ウッチーはわざと縦をあけて、相手にボールを出させる。そこから“よーいドン”で、追い付いて止めてしまう。それを海外で、CLの舞台でやってのけたのが内田篤人という選手。その上、賢くて、駆け引きも抜群にうまかった。別格だった。けががあって、そんなプレーが、思うようにできなくなっていた。Jリーグで“よーいドン”で負けるようなことがあって、自分が許せなくて、嫌になったんじゃないかな。

僕の結婚は、ウッチーのおかげ。プロポーズのサプライズ演出を全部、プロデュースしてもらった。うちの奥さんはずっと、「ウッチーに言われて勢いで結婚したんでしょ?」って言っている。違うんだけど…。初めてのW杯もそうだったし、なんだかんだで、人生の節目は、そばにいてくれた。たくさん与えてもらったのに、何ひとつ、返せてない。「マヤはセンターバックなんだから、あと10年やれる」って簡単に言うけど、それはどうかな…。

引退後は、セルジオ越後さんを超える毒舌評論家になって、日本サッカーのために、ボロカス言ってもらいたい。イギリスでは、ロイ・キーンやファーディナンド、G・ネビルが、テレビで好き放題、言っている。彼らにはそれだけのキャリアがある。ウッチーも、実績があるから説得力がある。代表戦で、当たり障りのないようなことじゃなくて、どこが悪いのか、ハッキリ言ってほしい。僕の悪いところも、ズバズバ指摘してもらいたい。そしたら「あと10年」、できるかもしれない。

代表でもう1回、一緒にプレーしたかった。さみしすぎて、贈る言葉が見つからない。「オレはまだまだ頑張るよ」-。今は、これくらいしか、言えない…。

ありがとう、マイブラザー。