アギーレ監督就任初の日本代表発表が、28日に迫った。来日以降、同監督は精力的にJリーグを視察してきた。どんな顔ぶれが選ばれるのか。W杯の1次リーグ敗退から2カ月、次の日本代表の「形」がメンバーから見えてくるはずだ。

 新監督の初招集は、常に注目される。そこに、監督のチームに対する考え方、今後への指針が示されるからだ。それが、日本サッカーへの「メッセージ」になる。「どんなチームを作るのか」「どんな選手が求められるのか」。それが、顔ぶれから読み取れる。

 過去、日本代表監督の初招集には「メッセージ」が込められていた。4年前のザッケローニ監督は、いきなり8人ものFWを招集。過去最多の人数は、監督の「攻撃的に戦う」という代表へのメッセージ。同監督は今年6月のW杯ブラジル大会も「初心」を貫きFW登録8人で戦った。

 06年W杯ドイツ大会後に就任したオシム監督は、最初に13人だけを発表。広島や千葉、鹿島の選手がA3選手権などの日程と重なり招集が困難となったためだが、日本協会とは最後まで調整を続けた。理想の代表チームを作るために妥協しない姿勢を貫いた。

 02年のジーコ監督は、同年のW杯メンバーから外れた中村俊輔を背番号10を与えて招集。「天才は並び立つ」という信念のもと、中田英寿、小野伸二、稲本潤一というテクニックのあるMF陣を並べる「黄金の中盤」作りを明言した。

 メンバー発表は、新監督の「初心表明」。ファンも我々報道陣も、そして多くの選手たちも期待する。クラブチームの監督ならば与えられた戦力でチーム作りをしなければならない。しかし、代表監督ならば「選択肢」は多い。Jリーグだけではない、海外でプレーする選手も、大学生や高校生でもいい。

 何らかの「メッセージ」があれば、チームの目指すものは分かる。選手にとっては、自らの課題や目標が立てやすくなる。そういう「メッセージ」が込められたメンバーを見たい。

 もっとも、前監督のチームをすべて否定し、まったく新しいチームになるのはどうか。W杯に出場するようになってからの日本代表は「4年周期」が定着している。4年間、1人の監督が指揮して(例外もあるけれど)W杯に出場。その反省も中途半端なまま、次の4年がスタートする。それを繰り返してきた。

 本来ならばW杯の日本代表の戦いを検証し、それを受けて代表監督の選考に入るのが普通だ。しかし、時機を逸すれば優秀な監督は「売れて」しまう。とてもスピード感を持って検証が行われるとは思えない今の日本協会技術委員会では、検証が終わるのを待っていたら監督がいなくなるというのも事実だろう。

 新しい代表チームは楽しみだし、メンバー発表からは多くの「メッセージ」を発信してほしい。若返りも重要で、フレッシュな顔ぶれも見てみたい。ただ、どこかには「ザッケローニ監督の遺産」は残してほしいと思う。4年に1回、前監督を否定してから前に進むので、いつまでたっても世界の頂きは遠い。【編集委員・荻島弘一】