「圭佑、砂糖いる?」。アジア杯・初戦パレスチナ戦の舞台となったニューカッスルの空港での出来事。ブリスベンへと向かう飛行機の搭乗を待っている本田に、長友が尋ねてきた。手には紙コップに注がれた熱いエスプレッソを2つ持っている。「ああ、俺はいらんわ」。そう言って1つを受け取ると、少しだけ口に付けて、渋みを味わうように遠くを見つめた。

 思えば10年W杯南アフリカ大会前に成田空港でインタビューをした時も、12年秋にロシアの空港で直撃した際もそうだった。本田はエスプレッソに砂糖を入れない。もちろんミルクも。じっくりと豆の味わいを楽しみながら、いつもかっこ良く時間をかけて飲み干していた。何度かそれを見ていたからだろうか。私もコーヒーに砂糖を入れなくなった。

 ゆっくり、ゆっくりと渋みを楽しみながら、同時に語り出す言葉はいつも熟成されたものだった。ビッグマウスなどと言われることもあるが、本田の言葉は常に熱く、時に心の奥に響くように重い。また近いうちに、ゆっくりとエスプレッソを味わいながらインタビューができる日を、楽しみにしている。【日本代表担当=益子浩一】