【バルセロナ(スペイン)20日=山本孔一通信員】日本代表のエスパニョールMF中村俊輔(31)が、早くもカターニャFW森本貴幸(21)を「新恋人」に指名した。岡田武史監督(52)がこの日、9月のオランダ遠征に向けて森本に初めて招集レターを出したことを明かした。これを受けて中村はセリエAで活躍する森本の力を認め「一緒にやるのが楽しみ」とまだ見ぬ男との融合に期待を膨らませた。得点力不足が声高に叫ばれる中で、新たなホットライン誕生を予感させた。

 イタリアを知る中村だけに、セリエAで名前を売る森本への評価は高かった。エスパニョールの練習後、メディアからオランダ遠征に話が及ぶと、まだ見ぬルーキーへ、期待の言葉が次から次へと飛び出した。

 中村

 イタリアでスタメンはすごい。若くて素晴らしい選手だと思う。1年以上コンスタントにプレーするってことは大事だからね。一緒にやれるのが楽しみだよ。海外に若いうちから出るのはプラスだし、刺激も強い。そういう存在がチームにいるのはいい。

 レジーナで4シーズン戦い、イタリアの厳しさをよく知る中村だけに、言葉には重みがある。守備力は世界一と呼ばれる「カテナチオの国」で、日本人FWが得点することは容易ではない。過去にジェノアで三浦知良、サンプドリア、メッシーナで柳沢、そしてトリノで大黒がプレーした。だれも旬の日本代表選手だったが、3人でゴール数はわずか1。既にリーグ9得点を記録する21歳の森本が評価されるのは当然だった。

 欧州の強豪オランダとのアウェー戦は、W杯本番をにらむ日本代表にとって絶好の腕試しの舞台だ。岡田監督は今回、W杯予選を戦った最強メンバーで戦う方針を示しており、初招集の森本を単独テストする考えのようだ。日本が掲げる「世界4強」へ、最大のテーマは得点力アップ。そのキーマンとして、不動の司令塔も森本を名指しした。

 中村の「恋人」といえば、過去に柳沢、高原がいた。どちらもDFの裏を取るプレーにたけたストライカー。森本も縦を突くスピードに加え、ゴール前の強さ、そして飛び込む迫力と申し分ない。そこへイタリアで磨いた駆け引きのうまさもある。だからこそ、中村は「一緒にやれるのが楽しみ」と繰り返した。31歳と21歳の初融合。「10歳差カップル」の今後に大きな注目が集まりそうだ。