キングが迷えるサッカー界にもの申した。22日、都内で日本プロサッカー選手会(JPFA)のシンポジウムが開かれ、横浜FCの元日本代表FWカズこと三浦知良(43)は、勝利給アップなどの要求を貫く決意を示した。同時に「代表戦のボイコットはするべきではない」と、大人の対応も求めた。JPFA会長の熊本MF藤田俊哉(39)は将来の選手のためとした取り組みを紹介、日本サッカー協会と対立する代表戦での待遇改善をあらためて訴えた。

 努めて冷静に口を開いた。JPFAが代表戦のボイコットを検討していることに意見を求められると「ストやボイコットはするべきではない。何があってもプレーをやめてはいけない」と秘めた思いを打ち明けた。根底にあるのはファンへの思いだ。「代表戦は5、6万人が見る試合。サポーターが待っているし期待があるから」。

 代表戦での待遇面については、協会を動かしてニンジン作戦を引きだした実績がある。90年、ブラジルから帰国しアジア大会に出場したが、当時の代表戦は報酬が0。翌91年のキリン杯直前の記者会見で、カズが作戦を練った。

 担当記者にあらかじめ協会幹部に対して、賞金の使い道を、テレビカメラが回る記者会見場で質問するように根回し。賞金の使い道を聞かれた当時の村田専務理事が答えに窮する。すかさずカズが「僕たちがもらっていいですよね」。まんまと1人50万円の賞金をゲットした。

 当時を思い出してか、カズは「勝利給は今より良かった気がする」と振り返った。在籍していたクラブより報酬が多かったこともあったという。

 93年までに待遇面は改善され、W杯予選などAからCまでの3段階の枠組みで報酬金額が設定。今は親善試合で強豪国とのマッチメークが可能になったが、親善試合なら枠組みはCランク。「18年前と変わっていなくてびっくりした」。

 JPFAと協会の対立は根深く主張は平行線が続く。この日のシンポジウムに参加予定はなかったが、自ら藤田会長に連絡し出席を志願。話し合いでの解決は理想論と認めつつ「選手の権利を訴えるためでストのためではない」と話した。

 21歳のカズはブラジルで協会と選手会の対立を見た。この記憶がカズの発言の重さを表す。勝利給、練習環境、プレー。「ブラジルで育ったからか、代表はすべてでトップであってほしい」。サッカー界のため、よりよい環境のため、キングは冷静かつ熱かった。