「長友2世」が日本のキーマンになる。U-22(22歳以下)日本代表は16日、ロンドン五輪アジア2次予選クウェート戦(19、23日)を控え、合宿地の静岡県内で練習後、初戦の開催地となる愛知・豊田に入った。長友ばりの豊富な運動量で、左サイドバックで相手カウンターに対応するDF比嘉祐介(22=流通経大)は、沖縄県出身初のサッカー五輪代表も目指す。大学卒業後の進路はJ1横浜入団へ意志を固め、本番に向けて集中力を高める。

 小雨の中、スローインからボールを足元で受けたDF比嘉は、瞬時に反転して前を向き、左サイドを駆け上がった。右利きながら主戦場は左サイドバック。身長168センチと大きくないが、豊富なスタミナで粘り強い守備と積極的な攻撃参加を武器にする。「長友2世」と呼ばれるゆえんだ。「一番意識しているのは長友選手」と本人も認める。

 沖縄・名護市出身。どこまでも続く青い海。物心つく頃から、そこが「庭」だった。実家から海へ歩いて5分。子どもの頃は毎日のように海で泳ぎ、潜った。知らず知らずのうちに肉体と心肺機能が鍛えられた。今も風邪ひとつひかず、けがもしない。そのタフネスの原点は、故郷の海にあった。

 強烈なカウンターを得意とするクウェートの攻撃を止めるキーマンになる。一方で個人的にも節目の一戦になる。大学卒業を控えて、複数のJクラブからオファーを受けていたが、このほど横浜へ入団する意志を固めた。出身地の名護市初のJリーガーになる。そして、ロンドン五輪に出場すれば沖縄県出身で初のサッカーでの五輪日本代表にもなる。「名護でも初のサッカー選手だし『初』を経験できるのはうれしい」と笑顔で話す。

 地元では早くも沖縄県民栄誉賞受賞の可能性が浮上した。過去には北京パラリンピック陸上男子マラソン(車いす)で銀メダルを獲得した上与那原寛和が受賞しているが、県庁の関係者は「比嘉選手が五輪に出場した場合には十分可能性がある」と明かす。

 中学卒業と同時に故郷を離れ、千葉の流通経大柏に入学。沖縄の方言しか話せなかった。当時を「言葉が一番きつかった。なまってるから聞き返されて」と振り返った「長友2世」は、大学生で五輪予選のピッチに立った本家と同じように、世界へ羽ばたく。【保坂恭子】