なでしこジャパンが、国内外で新たな歴史を築いた。W杯優勝の偉業を達成したサッカー女子代表が19日、凱旋(がいせん)帰国した。史上初の快挙に、国内では団体種目としては史上初の国民栄誉賞を受賞する可能性が浮上した。優勝効果はあまりにも大きく、世界各国から練習試合の申し込みが殺到。米国などから再戦を申し込まれ、ブラジルからも挑戦状が届いた。当初は8月21日に西が丘で予定していた、なでしこリーグオールスターとの試合が中止され、Aマッチに切り替えられることが濃厚となった。

 日本に勇気を、世界に衝撃を与えたなでしこジャパンが、最高の形で栄誉をたたえられる。日本女子が成し遂げた世界一の称号にふさわしい賞を、日本政府が検討に入った。枝野幸男官房長官はこの日午前の会見で、なでしこジャパンの偉業にふれ「これだけの快挙なので政府として何らかの形で顕彰したい。できることはしたいという姿勢で検討したい」と明言。スポーツ振興を担う高木義明文部科学相は「一部に国民栄誉賞との話もある」と話した。

 過去、国民栄誉賞は個人の受賞者が並び、団体での受賞は前例がない。五輪や野球のWBCなどでチームで世界一になったケースはあるが、3月11日の大震災後、日本に明るいニュースを届け、しかも試合内容でも日本全土に感動を与えたことは、大きなプラス要因になる。チームでの受賞になると初の快挙だ。

 世界女王になった直後から、世界の動きも激変した。今大会で対戦した米国、ドイツ、ロンドン五輪のホスト国イングランド、メキシコなどから再戦を要請され、ブラジル、フランスからも挑戦状が届いた。今までは世界の強豪に試合を申し込む立場から一変し、日本協会関係者は「多くの申し込みの中から、ロンドン五輪予選のテストとして最も適した相手を選びたい」と喜びを隠せなかった。

 当初は、9月1日から始まるロンドン五輪アジア予選(中国)の壮行試合として、8月21日に西が丘サッカー場(定員7258人)で、なでしこリーグオールスターとの対戦を予定していた。女子サッカーの人気などを考慮し、定員数1万人未満の同サッカー場でも無理はなかった。外国の強豪を招待した場合、対戦料を支払う必要があり、低予算のなでしことしては手が出なかった。

 しかし今回の優勝で、強豪国を無償で日本に呼ぶことが可能になった。海外に出向く際には、対戦料をもらうことも。女子代表への関心が高まり、現在5万人以上収容の会場探しと日程調整に入った。なでしこリーグ関係者は「日本協会がAマッチを優先した場合、オールスター戦は中止になる可能性が高い。国を挙げて後押ししている今、リーグとしても協力したい」。オールスター戦は、Aマッチの調整が不発に終わった時に限ることになる。

 なでしこジャパンは8月14日以降再集合し、五輪初メダルへ再挑戦を始める。同下旬に予定するAマッチを慈善試合として行う案も浮上。協会関係者は「W杯で優勝できたのは、被災地の方々の熱い応援の力も大きい」。当日は、ファンへの優勝報告会も兼ねる予定で、会場で募金を行い、収益全額を被災地に寄付する案もある。

 日本全土から注がれた関心とパワーが優勝要因の1つ。今度はなでしこが、日本に元気を還元する。【盧載鎭】