<キリンチャレンジ杯:日本3-0韓国>◇10日◇札幌ドーム

 日本代表初招集のFW清武弘嗣(21=C大阪)が、韓国戦で2アシストの鮮烈デビューを果たした。前半35分に負傷したFW岡崎慎司(25)に代わって途中出場。後半8分にFW本田圭佑(25)、同10分にFW香川真司(22)のゴールを立て続けにアシストし、大勝に貢献した。スタンドから欧州クラブのスカウト陣が熱視線を送る中、U-22(22歳以下)日本代表から「昇格」した五輪世代のエースが、A代表初陣で文句なしの存在感を見せつけた。

 とてもデビュー戦とは思えなかった。初体験のA代表戦、しかも相手は宿敵韓国。だが、清武はまるで動じなかった。1-0の後半8分、DF駒野のシュートをはじいた相手GKのこぼれ球が目の前に転がってきた。シュートの選択肢もあったが「自分でも勝負できました。でもパスの方が確率が高いと思って」。冷静な判断が貴重な2点目につながった。

 同10分には右サイドでパスを受けると、走り込んできた香川に丁寧にパスを出し、ダメ押しの3点目を演出した。「ピリピリしてましたけど、試合への入り方がとても良かったので、落ち着いてプレーできました」。21歳の新星はプレッシャーをものともせず、高いクオリティーを存分に発揮した。

 出番は予想以上に早かった。前半35分、右足を痛めたFW岡崎に代わってピッチに立った。中盤の右サイドに入ると、後方のDF内田に話しかけられた。「君のプレースタイルが分からないんだけど」。先輩の突然の言葉にも、すぐに切り返した。「香川君みたいです」。内田は「ああ、ボールを持つのが好きなんだなと分かりました」と理解したという。

 スタンドからは欧州に太いパイプを持つ代理人や、清武をリストアップしている昨季のフランス王者リール、同2位のマルセイユ、オランダ1部の名門フェイエノールトのスカウトが熱視線を送った。視察したベルギー国籍の代理人は「清武は将来性があり、面白い選手だと聞いている。本田は欧州で最も有名な日本人。各クラブが注目している」と話した。今夏の移籍期限は31日。清武自身は「何も聞いてないから分からない」と話すにとどめたが、海外移籍の可能性も高まってきた。

 試合後、清武は「まだまだこれから。まだミスもあった。今度はJリーグに集中したい」と満足していなかった。高い精度の攻撃力に強心臓。そして、まだまだ伸びしろもある。ザックジャパンの21歳のニューパワーは、W杯アジア3次予選の秘密兵器になりそうだ。【永野高輔】