<東日本大震災復興支援チャリティーマッチ:なでしこジャパン3-2なでしこリーグ選抜>◇19日◇国立

 なでしこジャパンが2万2049人の観衆から大歓声を浴びた。「東日本大震災復興支援チャリティーマッチ

 がんばろうニッポン!」は、女子W杯ドイツ大会で初優勝したなでしこジャパンが、なでしこリーグ選抜を退けた。菅直人首相(64)も駆けつける中、MF沢穂希(32=INAC)を中心に、世界女王なでしこジャパンの強さを、日本のファンにお披露目した。

 沢の左腕にあるオレンジ色のキャプテンマークは、雨のピッチ上でひときわ輝いて見えた。なでしこ初シュートは前半2分の沢。抜け出したFW川澄の後を追うように、ポニーテールを振り乱しながら約30メートルを疾走。こぼれ球を強引にダイレクトシュート。

 気迫の全力疾走と得点を狙う貪欲なプレーに、2万2049人は世界女王の激しさを見た。なでしこ選抜に、代表の力を見せつける義務と、応援してくれた日本中のファンに、頂点に立った実力を全力で披露する責任が、雨の中、沢を本気度100%に駆り立てた。

 沢は15歳から18年間、日本代表として戦ってきた。その中でも国立は特別。04年4月24日のアテネ五輪予選北朝鮮戦(3-0)は語り継がれる一戦になっている。沢は練習中に右膝半月板を痛め、歩くのも困難な状況だった。フィジカルの強い北朝鮮相手のファーストプレーだった。ボールを保持する相手に体をまともに当て、尻もちをつかせ、圧倒的な圧力でボールを奪った。仲間に安心と勇気を与えた7年前の再現だった。

 これまでは、なでしこの“聖地”は西が丘サッカー場だった。毎年この時期、なでしこリーグのオールスターを開催してきたが、急きょ今大会に変更となった。会場も男子の聖地、国立競技場に。なでしこが積み重ねてきた歴史の結晶となった。試合後、沢は「優勝は声援とパワーを送ってくれたおかげです。今の元気のない日本で、みなさん一緒に頑張っていきましょう」と、はつらつとあいさつ。

 サッカー人生のすべてをみてきた母満壽子(まいこ)さんも、スタンドから見る娘の姿に涙を浮かべた。「ホッとしました。帰ってきてから初めて直接顔を見ることができました」。いまだに沢は東京・府中市の実家に帰宅していない。親に会えないのは、サッカー界のために走り回っているから。そのことを誰よりも家族が理解している。

 この日からスパイクに「all

 in」(すべてをかけて)の言葉を入れた。「アジア予選日程も厳しいしグラウンド状況も過酷。全員の力が必要。全員がいないと勝てない」。沢は大黒柱として、すべてをかける戦いの場に立ち、再び走り始めた。【鎌田直秀】