日本代表のFW本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が、極秘でバルセロナ入りすることが8月31日、分かった。日本協会は、右膝半月板損傷のためW杯アジア3次予選・北朝鮮戦(2日、埼玉)に向けた代表を離脱し、緊急渡欧すると発表。本田は9月1日未明に羽田空港からパリ行きの便に乗った。関係者によるとモスクワには戻らず、パリ経由でバルセロナ入りする方向で、検査次第では手術も検討している。

 本田が極秘でバルセロナ入りすることが判明した。右膝半月板損傷のため、8月31日に日本代表を離脱することが決定。同日深夜に埼玉県内の宿舎を離れ、1日午前0時半すぎにパリ行きの便に乗った。日本協会の原博実技術委員長は「とりあえずモスクワではなくパリに向かう。その先はクラブに任せている。どこに行くかは日本協会ではなく、クラブの判断」と最終的な行き先は明かさなかった。だが関係者によれば、パリ経由で極秘にバルセロナに向かうという。

 安心できる日本の病院ではなく、欧州での治療を選択した。人工芝のスタジアムで臨んだ28日のリーグ・Sモスクワ戦で負傷し、前半だけで途中交代。半月板は場合によっては、選手生命にかかわることもある。来年のW杯最終予選、さらに自身の将来も見据え、バルセロナの膝の権威である医師の診断を仰ぐ。場合によっては手術に踏み切ることも検討している。

 手術となれば、長期離脱は避けられない。10月11日の同予選タジキスタン戦(長居)について、原委員長は「ケガの微妙なところは安易に言えない。回復がどうなるか、現時点では分からない」と明言を避けた。

 緊急事態に、ザッケローニ監督にも落胆と衝撃が走った。本田に加え、昨年のW杯メンバーの中村まで離脱する窮地に、言葉を選びながら淡々と話した。

 「2人のクオリティーと経験のある選手がいなくなるのは残念だ。2人は経験豊富。日本が失ったものは確かに、ある」

 わずか38時間の滞在で、本田は日本を離れた。前日30日に帰国したばかり。1度も代表のジャージーに着替えるどころか、練習場に姿を見せることもできなかった。3-0の歴史的大勝を飾った韓国戦(8月10日)の翌日、成田空港で本田はこう漏らしていた。

 「ようやく世界と戦う、本気でそういう意識を持った選手が出てきた。(これからが)楽しみっすね」

 昨年のW杯南アフリカ大会前には「優勝する」と公言しながら、誰もそれを信用しなかった。DF長友やMF香川らが追随し、ようやく世界で上位を狙うことを真剣に考える選手が出てきた。14年W杯では本気で優勝を目指す-。そう信じて疑わなかった。それだけにW杯予選という、ブラジルへと続く道のスタート地点に立てない悔しさと絶望感は、計り知れない。

 今後は慎重に治療とリハビリを進めていく。手術なら最短でも復帰まで2~3カ月かかる。日本は本田という絶対的な存在を欠いて、年内のW杯予選を戦う可能性もある。【益子浩一】