実は頭もイケてるんです!

 ロンドン五輪アジア最終予選のマレーシア戦(21日、ベアスタ)は、U-22(22歳以下)日本代表MF清武弘嗣(21)のヘッドに注目だ。平均身長の高くないマレーシア相手に、セットプレーで意外性のあるヘッドでの得点を狙う。キッカーがMF山田になったことで生まれたチャンス。身長172センチも、運動神経抜群の跳躍力で、今季ヘッドで4得点を挙げている。両足だけでなく頭もフル稼働させ、大切な初戦から大量得点を奪い、最高のスタートを目指す。

 ついに、清武のリアルな得点能力が本性を現した。両足だけでなく、実はヘディングにこそ、清武の才能が詰まっている。172センチ。どちらかと言えば低い方だが、打点が高く、クロスに対してばっちりのタイミングで合わせることができる。180センチ以上の長身選手が1人しかおらず、チームの平均身長が170センチのマレーシアにとって、脅威になることは間違いない。

 これまでU-22のセットプレーではキッカーだったが、この日の練習で関塚監督はCKとFKの右のキッカーに山田を指名。それが、清武の得点チャンスを広げることにつながった。長身のDF浜田、鈴木、酒井宏らをおとりに、マークの薄い中で清武がゴール前のクロスに飛び込むシーンが頻繁に見られそうだ。鈴木も「俺らが相手DFを引き連れてマイナスのボールというのもいい。いろいろバリエーションはある」と歓迎した。

 「ヘッドは得意」と口にする清武。「ヘディングで意識していることはない」といつものように淡々としているが、そのレベルの高さはチームメートが証言する。浜田は「前回はキッカーがいなくて(CKを)蹴っていたけど、ジャンプ力も技術もあって、しっかり決めてくれる。ヘディングできる選手が1人でも多いほうがいい」。MF扇原も「細かい動きでターゲットを外すのがうまく、ジャンプ力が高い」。

 今季は6月19日の五輪アジア2次予選クウェート戦(豊田ス)、チームでは8月6日の川崎F戦(等々力)、そして今月14日のACL準々決勝全北現代戦(長居)などでヘッドを決めた。所属するC大阪のレビークルピ監督も「キヨはヘディングがうまい。ヘッドに関しては香川よりも優れている」と、世界レベルであることを認めている。

 その清武のヘディングの原点は小学校の砂場にあった。サッカーを始めた明治北SSSでは、毎日小学校の砂場でダイビングヘッドやオーバーヘッドの練習を繰り返した。当時監督を務めていた新庄道臣総監督(66)は「皆のお手本になっていたのが清武で、何度も同じプレーを繰り返してもらった」と振り返る。足場の悪い砂の上での反復練習が、清武のジャンプ力をはぐくんだ。

 あれから十数年。舞台は遊び場だった砂場から五輪最終予選のピッチへと変わった。格下のマレーシアを相手に、前半最初のチャンスで確実に得点したい。清武のヘッドは、チームの選択肢を広げる心強い武器になりそうだ。【福岡吉央】