<親善試合:日本2-0アゼルバイジャン>◇23日◇エコパスタジアム

 日本代表FW香川真司(23=ドルトムント)の全得点にからむ活躍で、FIFAランク30位の日本が、同109位のアゼルバイジャンに勝利した。前半42分、MF長谷部誠(28=ウォルフスブルク)のパスを受け、右足で先制ゴール。後半13分には、FW岡崎慎司(26=シュツットガルト)の追加点の起点となるクロスを上げた。マンチェスターUなど、世界から注目を集める逸材が、その実力を改めて披露。6月から始まるW杯ブラジル大会アジア最終予選に向けて、弾みをつけた。

 思い描いた通りに、シュートはゴールに吸い込まれていった。前半42分、MF長谷部からのパスに反応してゴール前に走り込んだ。鋭いトラップで相手DFを切り返し、一瞬でゴールの位置を確認。右足を振り抜くと、左カーブを描いてGKの手をすり抜け、ゴール右上に決まった。「相手をかわせば、フリーになると分かっていた。ゴールも見えていて、あそこに蹴ろうと思っていた」と冷静に振り返った。

 貴重な先制点は、11年10月11日のW杯ブラジル大会アジア3次予選タジキスタン戦(長居)以来となる代表10得点目だった。さらに23歳67日での2ケタ得点は代表史上2位の年少記録で、節目の祝砲となった。

 香川がボールを持つと、スタンドが沸いた。何かが起こるのではないか-。そう予感させた。後半13分には、追加点の起点になった。左サイドをドリブルで上がり、ゴール前の本田へ絶妙なクロスを上げた。FW岡崎が右足で押し込み、勝利を引き寄せる2点目を挙げた。

 ドルトムントでプレーするトップ下ではなく、2列目の左サイドで先発。トップ下に入った本田との好連係で、2得点を生み出した。「圭佑くんが入ると、(体が)強いから2、3人を引きつけてパスを出せる。すぐにこっちを見てくれるし、もっとパス交換をしながら崩すプレーがあっていい」。昨年8月以来の共演で手応えをつかみ、アジア最終予選に向けてさらにイメージを膨らませた。

 この4年間で、本人も取り巻く環境も一変した。08年5月24日コートジボワール戦で代表デビューして以来、今日でちょうど4年がたち、出場30試合目。当時は、岡田監督と居残り練習に取り組む日々だった。苦手にしていたヘディングの特訓を受け、少しずつ代表になじんでいった。J2のC大阪で、空席の目立つスタジアムでプレーしていた弱冠19歳の少年は、4年後に世界中の視線を一身に受けるまでに成長した。

 今季は1試合に6万人もの熱狂的なサポーターで満員になるドルトムントで不動のトップ下としてリーグ連覇、ドイツ杯優勝に貢献した。名門マンチェスターUからオファーを受け、他にも今季プレミア王者のマンチェスターC、欧州CL覇者のチェルシー、アーセナルなどの強豪も獲得に動き始めている。代表でも、攻撃の要として欠かせない存在までになった。

 6月から始まるW杯アジア最終予選に向けて、さらにチーム力を高めていく。「もっと良くなる。時間をかけてチームをつくるいい機会。W杯の予選は雰囲気が違う。もっと練習を重ねていきたい」と静かに話した。代表合宿中「オマーン戦」という単語が度々聞かれた。当初から最終予選の初戦を強く意識していた。所属チームで結果を出し、次は代表の番だ。香川の視線は既に、さらなる高みをとらえている。【保坂恭子】