<W杯アジア最終予選:日本3-0オマーン>◇3日◇埼玉

 日本代表のFW香川真司(23=ドルトムント)が、名脇役として全3得点を演出した。前半11分に先制点の起点を作り、後半6分には絶好のラストパスからFW前田の2点目をアシスト。その3分後にも前田へつないだボールが、ダメ押し弾につながった。それでも先発攻撃陣でただ1人無得点に終わったことで「悔しい」…。ビッグクラブ移籍が目前の日本の新スターは、あくまでも14年W杯ブラジル大会に視線を向けた。

 夜空に浮かぶ月が、香川を照らした。W杯へと続く最終関門の初陣で、期待されたゴールはない。それでもゴールへと続く過程には、常に背番号10がいた。前半11分、香川がはたいたボールから本田の先制弾が生まれた。後半6分にはドリブルで切れ込んでゴール前の前田へラストパスを送り、2点目をアシスト。その3分後にも前田へ出したパスから3点目が生まれた。

 「ボクが中に切れ込んだ時に岡ちゃんとか(前田)遼一さんが中に入ってくる形を練習からやっていたんで。2点目は(アシストを)狙っていました。いいスタートが切れた。チームが勝ったことはポジティブにとらえたいと思います」

 決して大きくはない体いっぱい、負けん気を詰め込んでいる。前線の攻撃陣4人のうち、1人だけ無得点。全得点に絡んでも、それが悔しくて仕方ない。試合後、笑顔はほとんど見られなかった。サッカーを始めた幼少時代もそうだった。勝っても、自分のプレーに満足できなければ喜ばない。既にマンチェスターUとの移籍交渉は最終段階。欧州の複数のビッグクラブからオファーが届く男には、そんな強い気持ちがある。

 負けず嫌いな心の裏側に、優しい心も併せ持つ。2得点を挙げた1月28日ホッフェンハイム戦の翌日。まだ前夜の興奮を抱えたまま、ドルトムント市内を車で走っていた。「何をあげたら喜ぶかな」…。ちょうど3日前、日本代表でも古巣のC大阪でも世話になった神戸FW大久保に三男橙利(とうり)ちゃんが誕生していた。迷いに迷い、購入したのはドルトムントの新生児用のユニホーム。「お父さんと同じように、立派なサッカー選手になって欲しい」-。そんな願いを込め、日本へ届けた。

 「得点がないのは、純粋に悔しい。ボクはもっとペナルティーエリア内で勝負しないといけない。それができなかった。チャンスメークする選手ではないから。そういう点では個人的には悔しいし、物足りない」

 日本の期待、欧州の注目を浴びる。中4日でヨルダン戦。そして敵地へ乗り込んで前回予選で苦戦したオーストラリア戦に挑む。3連戦後には、いよいよビッグクラブ移籍が現実になる。最終予選を通過点に、自身初のW杯となる14年ブラジル大会へ。負けず嫌いの香川に導かれ、日本はもっと強くなる。【益子浩一】