なでしこジャパンが7月2日のロンドン五輪代表メンバー18人発表後、即練習開始の異例の態勢で臨むことが22日、分かった。国内組はなでしこリーグ杯が同8日まで開催されるため、まずはFW永里優季(24=ポツダム)ら海外組のみで行う。スウェーデン遠征では世界ランク1位の米国に1-4と惨敗し、チーム強化に時間的余裕はなくなった。発表即練習は、なでしこジャパンの切迫した状況を物語っている。なでしこジャパンは帰国し、一時解散した。

 佐々木則夫監督(54)の思いは切実だ。五輪開幕まで約1カ月。残された時間は少しも無駄にしない。「時間はあるようでない。とにかく集まって一緒に過ごすことが大事。(7月は)暑いだろうから、午後はゆっくり芝生の上で話をするくらいでもいいんだよ」。一刻も早い再集合を希望した。

 7月2日、予定では昼前後に栄えあるロンドン五輪代表メンバー18人が発表される。通常なら、日を置いてメンバーを集合させるが、今回はとにかく何事も電光石火。発表から数時間後の夕方には都内に即集合、即練習開始。発表当日に練習を始めることなど前代未聞。それが、女子サッカーでは最も権威ある五輪メンバー発表だ。いかに異例かつ特別のシフトかがうかがえる。

 まずは海外組数人で6日まで汗を流す。その後、カップ戦が8日まである国内組を9日に合流させる。指揮官も2日の午前中にカナダ-米国戦(オタワ)視察から帰国し、即発表会見、即練習の強行軍だ。

 すでに、佐々木監督の「寸暇を惜しんで」作戦ははじまっている。スウェーデン遠征中から“則夫の部屋”で個人面接を開始。「選手が何を感じているか。私たちスタッフと共通意識も必要。再集合までに準備しなくちゃいけないこともそれぞれと話しました」。長くて約30分、短くても約10分。帰路途中、パリでのトランジットを利用して、ターミナル内でも個人面談を続けた。尻に火が付いたなでしこジャパンの必死さは相当なものだ。

 今回は米国に惨敗した。佐々木監督は「ヘタに同点とか僅差でなく、惨敗して得るものがあった。課題が薄れてしまうのではなく、明確になった。だからズタズタじゃなく“ズタ”くらいかな」と、チームの現状を分かりやすく説明した。

 金メダル最大のライバル米国は、今季米女子サッカーリーグが中止となり、代表活動に専念できた。2~3月のアルガルベ杯、4月のキリンチャレンジ杯、そしてスウェーデン招待と、米国は強化に成功してきた。コンディション面で大きく差をつけられた監督には相当な危機感がある。

 佐々木監督は今日23日にはリーグ杯を視察し、18人を最終決定する。「寸暇を惜しむ」監督は、解散した空港近くのホテルに、さっそく携帯電話を忘れた。焦るノリサン…。残された時間は、あとわずか。【鎌田直秀】