12日のフランス戦で好セーブを連発したサッカー日本代表GK川島永嗣(29)の活躍をめぐり、フランスの国営テレビ「フランス2」の番組が不適切な報道をしていたことが、16日までに分かった。

 問題の番組は13日夜に放送された情報バラエティーで、川島の腕が4本ある合成写真を映し、司会者が「福島(第1原発事故)の影響ではないか」とやゆする発言をしていた。

 これを受け、在フランス日本大使館は16日未明、同テレビに対し「(東日本大震災や原発事故の)被災者の心情を傷つけるもので遺憾。強く抗議する」とする文書を送達。欧州各国のメディアの間でも「行き過ぎだ」などと問題視する見方が広がっている。

 番組では司会者でコメディアンのローラン・リュキエ氏が、日本が1-0でフランスに勝利した親善試合に触れ「日本には素晴らしいGKがいた」と川島を称賛するコメント。その直後に「だが疑わしい点がある」と指摘した上で、スクリーンに川島の合成写真を映し出し「福島の影響があったとしても、私は驚かない」と発言した。スタジオの一般参加視聴者から拍手と笑いが起こった。

 これに対し、川島がプレーするベルギーの有力紙は「行き過ぎ発言か?」と報道、地元フランスのメディアも「趣味の悪い冗談」などと批判的に取り上げた。

 川島はリールスに所属していた昨年8月にもベルギーリーグの試合で、相手チームのサポーターから「カワシマ、フクシマ」とやじを飛ばされ、相手チームが同国サッカー協会から3万スイスフラン(約254万円)の罰金を科せられている。

 日本でも藤村修官房長官が16日の記者会見で「不適切な表現があった」と不快感を示したほか、田中真紀子文科相も「事実なら配慮に欠けた行為。原子力の問題で傷ついている人がたくさんいる。何でそういうことになるのか」と話した。

 ◆フランス2

 フランスの公共放送局である「フランス・テレビジョン」がフランス3、同4、同5などとともに所有するチャンネルの1つ。フランス2は最も中心となるチャンネルで、番組は総合編成。ニュースからバラエティー、ドラマまで幅広い番組を放送する。これに対し、フランス3はローカルニュースや地元イベントの紹介など、地域向けの番組が中心。同4は音楽や芸術などエンターテインメントを扱い、同5は教育向けチャンネルとなっている。