<フットサルW杯:日本1-4ブラジル>◇1日◇タイ・ナコーンラーチャシーマー・コラートチャッチャイホール◇1次リーグC組

 カズが、ついにW杯の舞台に立った。フットサル日本代表は1次リーグ初戦でブラジルと対戦し負けた。三浦知良(45=横浜FC)は前後半合わせて3度途中出場し、体を張ったプレーでチームを鼓舞。45歳8カ月での出場は大会最年長記録となった。約1000人の日本人サポーターが詰め掛けた中で勝利はならなかったが、キングがW杯の歴史に確かな1歩をしるした。

 鮮やかな水色のコートに、カズが駆けだした。前半4分56秒。フットサルの歴史、日本サッカー界の歴史に、新たな1ページが刻まれた瞬間だった。

 空いたスペースを指さしながら動き回り、味方のパスを呼ぶ。5分10秒には自陣の右サイドでFPネトと競り合い、豪快に倒された。しかしすぐに立ち上がり、再び走る。6分15秒には、左サイドを駆け上がってシュートを試みたが、ブロックされた。

 8分11秒にベンチに退くと、チームは残り6分に先制ゴールを許してしまう。すると、残り4分26秒にカズが再び登場。同2分には左サイドのライン際でカズの代名詞とも言えるまたぎフェイントを7回。そのまま相手選手と交錯し、看板に激突し、左ひじを擦りむき出血する激しさだった。

 試合は大敗に終わった。試合後、カズは報道陣に囲まれ、自身初のW杯出場を聞かれると、落ち着いた口調で切りだした。

 カズ

 悔しいですね。代表の試合は何度味わっても幸せなものですね。

 夢にまで見た日本代表のユニホームをまとってのW杯。サッカーではなく、フットサルで現実にしたが、夢を持ち続ける男の言葉は純粋だった。「ブラジルが組織だって守ってきたのには驚いた。それだけ日本へのリスペクトがあったんだと思う。あと2試合、自分たち次第で(結果は)変えられる。いい準備をしてポルトガル戦に臨むだけ」。

 開幕2日前の先月30日。宿舎での夕食後に、選手14人全員がそれぞれの思いを順番に発表していった。カズは「結果が出るまで、最後の1秒まであきらめずに戦おう」と呼び掛けた。最後に、主将のFP木暮が立った。「ここまでついてきてくれてありがとう。W杯に立てなかった選手の分まで、すべての人たちにありがとうと言いたい」と言いながら涙した。テーブルについて聞いていたカズも、涙を浮かべていた。

 カズの45歳と249日での出場は、00年大会のキンデラン(キューバ)の40歳6カ月を抜き大会最年長記録だ。後半にも、開始4分55秒に登場。仲間を鼓舞するように機敏に動き回ると、ベンチに下がった直後の7分46秒に、FP稲葉が左足でネットを揺らし、1点を返した。

 3度出場し、合計7分37秒。カズのW杯はここに始まり、日本代表の夢、1次リーグ突破への挑戦はここからだ。【由本裕貴】