ザック流の愛のムチが打たれた。日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(59)が5日、W杯アジア最終予選オマーン戦(14日、マスカット)のメンバー23人を発表。1年5カ月ぶりに、FW宇佐美貴史(20=ホッフェンハイム)を招集したが「2年前から大きく成長していない」と、一刀両断した。W杯本番で鍵を握るであろう若手ホープの出現に期待を込めて、厳しいダメ出しを行った。

 内に秘めていた不安を、ザッケローニ監督が次々とはき出した。最終予選を負けなしで折り返した一方で、ほとんど固定されたメンバーの中、若手選手の出場機会がないことを指摘された直後だった。

 「成長している姿を見せてほしい。その証しがあればクラブで出られる。宇佐美はまだ出られているが、大津、宮市はクラブで出ていない。原口も昨年よりも出られていない。飛躍的に成長している選手が見当たらない。もっと要求したい。成長してもらいたい」

 代表のピッチに立ちたいなら、クラブで結果を残してみろ。そう言わんばかりに、言葉を滑らせた。若手選手に対してあえて口にした苦言。その対象は1年5カ月ぶりに呼んだ宇佐美でさえ、例外ではない。「2年たって大きく成長していない。現在やっていることは、2年前できていたことをやっているだけだ」。G大阪時代から見せる突破力は分かっている。「それだけにとどまらず、スペースに走ってほしい」と注文をつけた。

 左膝を負傷し欠場するFW香川の代役にはMF清武の起用が濃厚だが、W杯本大会で勝つ上で、このタイミングでの若手選手の台頭は必要不可欠。ただMF本田、香川を超える若手がいない現実を前に、ザック流の愛情の裏返しでもあった。予選を戦う一方で、これまで同監督は「若手枠」を設けてきた。原口や宮市を手元に呼びながら、自身のやりたいサッカーを練習の中で植え付けてきた。ただ、試合になると起用するまでには及ばない。「クラブの監督も私と同じ気持ちでいるのだろう」と心境を語った。

 1位を独走する日本は、アウェーでオマーンに勝てば5大会連続出場に王手をかけられる。本大会を見据えた視点こそ、世界を驚かすことにつながる。「高い質を持っていることを分からせるために呼んでいる」とザック。期待しているからこそ、その言葉は熱を帯びた。【栗田成芳】

 ◆宇佐美と日本代表

 19歳だった11年6月に、ペルーとチェコを迎えたキリン杯で、初めて日本代表に招集された。2戦とも出場はなく、国際Aマッチのキャップ数はゼロ。それ以来の招集となった。当時はG大阪でプレーし、世代別代表では各世代で名を連ねていた。プラチナ世代として09年U-17W杯に出場。今夏のロンドン五輪にもU-23代表として出場した。