「本田効果」は、エースナンバーを背負う男にも飛び火した。W杯出場決定から一夜明けた5日、日本代表FW香川真司(24=マンチェスターU)は喜びムードもそこそこに、世界へ挑む心構えを示した。代表の団結力の高さを認めた上で「今後は強烈な個性を持った選手が出てこないと」と主張。個人のプレーの質を高める必要性を説いたMF本田圭佑(26)に触発されたかのように、各選手の意識向上を求めた。

 W杯出場を決めた直後には、目に光るものもみせていた香川に笑顔はなかった。前日の歓喜など感じさせないほど表情は硬い。本田が記者会見で、個人名を出しながら「世界と戦うには個のレベルアップが必要」と説明した直後のこと。「金髪のカリスマ」に感銘を受けたかのように、今度は自分の言葉を並べた。

 香川

 今の僕らでは世界と戦うには厳しい。もっと強烈な個性を持った選手が出てこないと。もちろん僕も、今以上のものを表現しないといけない。

 コンフェデ杯、W杯と続く国際大会で勝ち抜くために、香川なりに考えた要素。それは日本人好みの「強固な団結力」ではなく、時にはなりふり構わず発揮すべき「自己主張」だった。

 もちろん、本田の言葉に心動かされてとってつけたわけではなく、経験に基づく意見。今季はマンチェスターUという世界的ビッグクラブに身を置き、感じていたものこそ「強烈な個性を持った選手」の多さだった。

 香川

 前線のプレーヤーには「最後は俺が決めるんだ」と言って聞かない人がいる。そういう選手にはインパクトがあって、チームにもいい刺激を与えてくれる。今の代表には「チームのため」と言うことがカッコいいという考え方がある。だけど「俺が、俺が」っていう選手がもっと必要。個性が足りない。

 香川の求める選手は、代表でいえば本田のような選手のこと。PK獲得の瞬間からボールを手放さずキッカーに立候補するような、試合前には年上の今野に「俺のこと見えてる?

 俺に出して」とパスの注文を出すような、「自己中心的」とも取られかねない行動。マンチェスターUをリーグ制覇に導いたのも自己主張が強い選手たちだった。「勝負できるチームには気持ちが強いプレーヤーが多い。あと1年。自分も大舞台で輝けるようにしたい」。欲するだけではなく、最後は自分にも言い聞かせるようだった。【湯浅知彦】