<東アジア杯:日本3-2オーストラリア>◇25日◇韓国・華城競技場

 和製メッシが決めた!

 日本代表初招集のFW斎藤学(23=横浜)が代表初ゴールを決めた。前半26分、左サイドから得意のドリブルでゴール右へと切れ込み、右足で絶妙ループ。個性を生かした先制弾で“ドリブラー枠”での代表生き残りを強烈にアピールした。FIFAランク37位の日本は同40位オーストラリアを下し、1勝1分けで首位に浮上。28日の韓国戦で勝てば初優勝が決まる。

 霧でかすみがかった華城のピッチで、和製メッシが瞬く間に相手DFを切り裂いた。前半26分、FW斎藤が得意のドリブルから先制弾。左サイドからゴール前に切れ込むと、5度のフェイントで相手を翻弄(ほんろう)し、GKの位置を見極めた上で右足でループシュート。真骨頂のゴールに、右拳を突き上げ、喜びを爆発させた。

 「右から入っていくのは得意。うまく(相手の)間を突こうと思ったら、全然ついてこなかった。もっと浮かそうと思ったけど、結果的にうまくいった」

 中国との初戦は途中出場で見せ場がなかった。気温27度、湿度84%という蒸し暑さの中、代表2戦目での初ゴール。先発を告げられたのは試合前のミーティングだったが、冷静だった。「Jリーグの相手よりも大きいが足は遅いので、1対1はしやすかった」。身長は両チームで最も低い169センチ。日本代表にはMF乾や今回招集されているFW原口らドリブルが得意なライバルは多いが、大柄な相手をあざ笑うかのようなドリブルで、ザッケローニ監督に強烈に存在を印象づけた。

 後半11分にはFW豊田のパスをまたいでスルー、FW大迫のゴールを演出。「ゴール以外はFKを取ったくらい。この相手ならもっとやらないといけない」と満足しなかったが、本家メッシばりのプレーに、ザッケローニ監督も「ゴールはすごく良かった。いくつか攻撃に絡むプレーもできた」と高評価を与えた。

 俊足ドリブルを生むガッチリした太ももは、現在は福島第1原発事故対策の前線基地となっているJヴィレッジで培った。03年、13歳でナショナルトレセンの合宿で訪問。当時のメンバーでも身長は一番低く、体が大きくなりたいと、食堂では1人で残り、涙を流し、食べ続けた。横浜ユース時代の06年には、同地での試合でクロスに飛び込み、勢い余りゴールポストに激突。脳振とうで一時、記憶をなくすハプニングに見舞われた。

 がむしゃらにプロの礎を築き、思い出あふれるJヴィレッジに、斎藤は「もう1度あそこでサッカーをやりたい気持ちはあるけど、まずは被災者のために役割を果たしてほしい」と、思いを寄せる。

 最終戦の相手はロンドン五輪3位決定戦で敗れた韓国。「韓国は負けられない相手。五輪の時の仕返しもあるんで絶対に勝ちたい」と力強い。試合後、会場の霧は、斎藤の未来を映し出すかのように、きれいに晴れ渡った。「ハマのメッシ」から「日本のメッシ」へ-。常にがむしゃらな斎藤は、今後も自らのドリブルでW杯出場への道を切り開いていく。【福岡吉央】

 ◆斎藤学(さいとう・まなぶ)1990年(平2)4月4日、神奈川県生まれ。07年U-17W杯韓国大会出場。小学生時代から横浜下部組織で育ち、09年にトップ昇格。11年にJ2愛媛で14得点をマーク、12年から横浜復帰。今季は公式戦5得点。169センチ、68キロ。血液型A。

 ◆日本優勝の条件

 勝ち点4で首位の日本は、28日の午後8時キックオフの韓国戦に勝てば無条件で優勝。同日の午後5時15分開始のオーストラリア-中国戦で、中国が引き分けか負けなら、日本は韓国に引き分けでも優勝。