W杯ブラジル大会限りでの退任を表明した日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(61)が1日、羽田空港発の航空機でイタリアに帰国した。空港にはサプライズで主将のMF長谷部誠(30=フランクフルト)、DF内田篤人(26=シャルケ)が見送りに駆け付け、厚い信頼関係をうかがわせた。今後については、サッカーへの情熱は失っていないとしつつ、指導者からの引退も選択肢にはあると話した。

 羽田空港の出発ロビーに姿を現したザックの目は、すでに潤んでいた。歩を進める指揮官の後ろには、長谷部と内田がいた。愛弟子がサプライズで仕掛けた見送りに、目を赤くしていた。「すごくさみしい。協会、チーム、選手といい関係を築けていた。この4年間、素晴らしい時間を過ごさせてもらった。自分が皆さんに与えた以上に、多くの物を与えてもらった」と言い、目を潤ませた。

 中国代表が次期監督にリストアップしているが、今後については明言を避けた。「サッカーへの情熱は失っていないが」と前置きして、監督業から退くことも選択肢であるとした。「まずは少し休みたい。次というのは考えられない。これ以上(のチームを作ること)は正直ないと思うし、引退というチョイスもある」と素直に語った。日本代表監督としての仕事に全身全霊を傾けていた。だが、W杯1次リーグの3試合で1分け2敗という残酷な結果を受け入れざるを得なかった。「(日本代表が)全てだった」と話した。

 長谷部と内田とは、手荷物チェックの入り口で熱い抱擁を交わし別れた。共闘した選手からの粋な演出に「イエローカードです」と笑い「そこまでやってくれてうれしい。ビッグサプライズだ」と柔和な笑みを浮かべた。55戦31勝11分け13敗の戦績を残し、初のイタリア人監督は日本を後にした。【高橋悟史】