いきなりアギーレ色全開!

 日本サッカー協会は28日、ハビエル・アギーレ新監督(55)の初陣となるウルグアイ戦(9月5日、札幌)、ベネズエラ戦(同9日、横浜国際)の日本代表メンバー23人を発表した。ブレーク中の東京FW武藤嘉紀(22)に加え、鳥栖DF坂井達弥(23)広島FW皆川佑介(22)ら無名の5選手がサプライズの初選出。会見でアギーレ監督が「ゼロからのスタート」と繰り返したように、肩書に関係ない横一線のサバイバル競争が始まる。

 全てのサッカー選手に扉は開かれている。日本代表の失地回復へ向けて、アギーレ新監督は厳しい表情で切り出した。「新しいステージの始まり。初戦から戦う、競争力のあるチームを見せたい」。欧州でプレーする12人の選手、そしてJリーグからは11人。ほぼ無名ともいえるFW武藤、皆川、MF森岡、DF坂井、松原という5人のサプライズ選出に、新指揮官のメッセージが込められていた。

 「過去のリストを見て選んだのではない。コーチ陣、霜田さん(技術委員)の意見を聞きながら、たくさんの試合の視察もしたしビデオもチェックした。これからも、過去を基準にすることなく、選んでいきたい」。当面の目標は連覇のかかる年明けのアジア杯、そして4年後に見据えるW杯ロシア大会へ向け、まずは競争の激化を求めた。

 「ゼロからのスタート」という言葉を会見中、何度も繰り返し、最初のミーティングでも強調することを明言した。年齢、プレーするクラブの差、過去の実績などの肩書を取り払う。アジア杯へ向けて年内の6試合をテストとし、「パスした者だけが残ることができる」とサバイバルレースの号砲を鳴らした。

 就任会見で言ったスペイン語の「Compromiso(コンプロミソ)」。責務、責任という意味の言葉のヒントを持論を踏まえて明かした。1試合(90分)で正味のプレー時間は45~48分。「22人の選手でボールは1つ。平均を割り出せば1人あたり約2分がボールを持つ。それ以外の88分に何をしているかだ」。1人の選手からすれば、90分の試合の大部分を占めるボールがないところ(オフザボール)の行動を注視。テレビには映らない場所でいかに汗をかけるかを見ていた。

 「走れない選手は呼ばない」。逆に走り切れて、戦うことが出来れば有名無名にかかわらず、フラットに見ている指揮官の目に留まるということだ。DF坂井は今季のリーグ戦出場はわずか4試合。大卒ルーキーFW皆川は7試合で6試合が交代出場。少ない時間でも、要求に応えられる片りんを見せた選手は、手元で見るために迷わず呼んだ。

 自信満々に「自分の目で決めた」とアギーレ監督。W杯ブラジル大会からは11人がメンバーから外れる一方で、5人がサプライズ選出された。初陣を前に、アギーレイズムを存分に示した。【高橋悟史】

 ◆皆川佑介(みながわ・ゆうすけ)1991年(平3)10月9日、東京都生まれ。前橋育英高から中大。13年にユニバーシアード日本代表。14年広島入り。7月19日大宮戦でデビュー。J1通算7試合(238分)2得点。

 ◆坂井達弥(さかい・たつや)1990年(平2)11月19日、福岡県出身。東福岡高から鹿屋体育大。12年3月に特別指定選手に承認され、鳥栖に所属。今季4試合(360分)無得点。通算20試合無得点。

 ◆松原健(まつばら・けん)1993年(平5)2月16日、大分県出身。大分ユースから大分。今季は新潟に期限付き移籍中。今年1月のU-22アジア選手権代表。今季20試合(1800分)無得点。通算28試合無得点。

 ◆森岡亮太(もりおか・りょうた)1991年(平3)4月12日、京都・城陽市出身。東城陽中-久御山高。09年にU-18日本代表候補、高校卒業後に神戸入団。今季リーグは21試合(1856分)2得点。通算70試合5得点。

 ◆武藤嘉紀(むとう・よしのり)1992年(平4)7月15日、東京都生まれ。慶応高時代は東京U-18。慶大に進み12年に特別指定選手で東京登録。14年プロ契約。今季20試合(1384分)7得点。J1通算21試合7得点。