日本代表に選出された東京FW武藤嘉紀(22)が、吉報直後にヒヤリとさせた。日本サッカー協会は1日、東京・JFAハウスでジャマイカ、ブラジルと対戦する国際親善試合へ向けた代表メンバー23人を発表した。その後のチーム練習で、武藤は顔面を強打し、そのまま病院へ直行。大事には至らず今日2日にも合流する予定だが、アギーレジャパン第1号ゴールを決めた新星の負傷に、練習場は一時騒然となった。

 低空姿勢で飛び込んだ武藤の顔面に、スパイクの裏が直撃した。実戦形式の練習で、低めのボールに頭から突っ込んだ。「足を滑らせた」と球際を争ったDFのかかと部分のスパイクのポイントで、顎を裂傷した。そのまま倒れ込み流血。口の中を切り、歯も欠けた。午後練習開始から1時間もしないで途中離脱し、病院へ直行。それでも、傷口を保護しクラブハウスに戻ると「ひどくなくて安心した。問題ないです」。今日2日まで様子を見て処置を受ける。

 プレーには支障なさそうだが、訪れたファンは心配そうに見つめた。東京にとってこの日は“祝日”。午後練習前に、代表選出の朗報を受けた。初選出の9月のベネズエラ戦でアギーレジャパン1号を決め、アギーレ監督が視察に訪れた柏戦(9月27日)では「御前試合」で2発決めていただけに、プロ1年目ながら順当選出。さらに東京からは森重に加え、権田、太田と異例の4人選出。代表期間中の公式戦がないという事情もある。だが現在リーグ14戦不敗と好調のチームを象徴。しかも東京にとって記念すべき日だった。

 10月1日は「都民の日」。98年のこの日にクラブが設立され、16回目のバースデーだった。公立学校が休みとあって多くのファンが練習見学に訪れた。これ以上ない祝日に、練習場は一時騒然。それでも大事には至らずフィッカデンティ監督は「プレーは問題ないと思う」と、5日のアウェー仙台戦で起用する方針だ。翌日6日からの代表合宿にも辞退することなく合流できそうだ。

 代表合宿後、コンディションは落とすことなく維持してきた。マークが厳しくなる中で、パフォーマンスはむしろ上がっていた。「代表に行って『コンディションが落ちた』って言われたくなかった。だからメンタルと体には気を使って過ごしてきた」。9月の代表戦後のリーグ戦4試合で3得点。その結果以上に、プレーの1つ1つに、余裕を感じさせるほどだった。

 武藤にとって、初めてとなる海外での代表戦も待ち受ける。しかも相手はブラジルだ。それでも「得点がしたい。チームのために走って、チームのためにプレーしたい。まずは(5日の)仙台で結果を残したい」。たとえ壁にぶち当たっても、前へ前へ突き進む。【栗田成芳】