八百長疑惑でスペイン検察当局に告発された日本代表のハビエル・アギーレ監督(56)に解任論が巻き起こった。日本協会は16日、15日の告発を受け、大仁邦弥会長(70)ら幹部6人で対策会議を開くなど対応に追われた。スペインでは告発が本格的な捜査のスタートを意味しており、まだ「灰色」の状態。現時点で同協会はアジア杯オーストラリア大会(来年1月9日開幕)を含め、アギーレ監督が指揮を執る方針に変わりはないが、周囲からは解任の空気が漂ってきた。

 迷える日本協会とは裏腹に、周辺は騒がしくなってきた。代表監督が八百長疑惑で告発される異例の事態から一夜明けたこの日、あるJクラブ実行委員は「監督はもう持たないでしょ」と話せば、年間50億円以上を拠出する日本協会のスポンサー筋も「対応が遅すぎる」という声が渦巻いた。

 日本協会は午前から慌ただしく動いた。10時すぎに法務委員長を務める三好弁護士が協会入り。大仁会長、原専務理事ら幹部6人で対策会議を開いた。アギーレ監督にも通訳を介して電話で状況確認し「司法当局からの正式な連絡は、まだない」との回答を得た。

 4日の事情聴取でアギーレ監督は「八百長には一切関与していない」と主張。対策会議を終えて、この日の夕方に会見した西沢コミュニケーション部長も「現時点でその主張が覆ることはないし、何かを判断することはない」と明言した上で、29日から始まる日本代表国内合宿も同監督が指揮を執る方向だと強調した。

 11年5月、降格危機のアギーレ監督率いるサラゴサ(当時スペイン1部)とレバンテの一戦を前に、サラゴサのイグレシアス会長がボーナス名義で監督、選手に振り込んだ金が相手選手に渡った疑いがある。スペイン検察庁反汚職課がバレンシア裁判所に提出した告発文によると、同会長と顧問ポルケラ氏が八百長行為についてアギーレ監督や主力選手のガビ、エレラらを中心に全選手と同意。アギーレ監督の口座への5万ユーロ(約750万円)と3万5000ユーロ(約525万円)の振り込みと、5月19日には5万ユーロを、20日には3万5000ユーロを引き出した形跡が確認されているという。

 スペインのアス紙は「サラゴサの会長が監督と選手にあらかじめ試合が八百長であることを伝え、同意を得たことを示す書類があるとしている」と報道。事実なら極めて「クロ」に近い状況に陥るものだが、告発文を日本協会は入手して和訳したところ、そこにはアス紙が報道した書類についての記述は一切なかった。

 日本協会にとっては4年前から目を付け、W杯の惨敗から日本サッカーを復権させる人材として登用した監督。当然、有罪ではなく「灰色」で解任するのは本意ではない。現状で解任した場合に発生する多額の違約金などの問題もある。

 ただ、告発された事実は重く、今後はスペイン人の顧問弁護士やアギーレ監督の顧問弁護士らと密に連携を取り、捜査の流れや聴取の時期などを独自に細かく調査していく。日本協会副会長の村井Jリーグチェアマンはこの日「日本代表は子供の夢、希望そのもの。(起訴などになれば)日本協会も毅然(きぜん)とした態度を取ると思う」と慎重に話した。このまま指揮を執り続ければ、アジア杯も「灰色」の状態。疑惑がかかったままの采配が、チームに悪影響を与える可能性もある。【菅家大輔】