日本サッカー協会は18日、JFAハウスで理事会を開き、スペイン検察当局に八百長疑惑で告発された日本代表ハビエル・アギーレ監督(56=メキシコ)が予定通りアジア杯オーストラリア大会(来年1月9日開幕)で続投することを確認した。理事会冒頭で大仁邦弥会長(70)が現状説明したが、代表監督の八百長疑惑という異常事態にも、理事会で議論はなく、理事会の機能不全を露呈した。その後、原博実専務理事が会見し、情報収集に全力を挙げると話し「いろいろな状況を考えながらやっている」と、最悪のケースも想定していることを明らかにした。

 注目された理事会は拍子抜けに、原専務理事の会見は消化不良に終わった。理事会の冒頭で大仁会長はアギーレ監督の疑惑について現状説明し関係者に謝罪した。その上で原専務理事は「アギーレ監督がアジア杯で指揮を執ることは変わらない。報道等で心配していた理事の方々に、事実はこうだ、と報告し理解していただいた」と説明した。

 八百長疑惑で告発されながらも監督を続けることに、理事会出席者からは「日本の司法制度に照らせばどの段階か」などの質問が出ただけ。3時間以上に及んだ理事会で、予定されていた協議事項、報告事項に多くの時間が割かれた。日本サッカーの屋台骨を支えるA代表の監督に疑惑がかかる中、ほとんど声が上がらない。業務執行の決定を下す場の意義が問われてもおかしくない。一般的な感覚から大きく乖離(かいり)した温度差がうかがえる。

 会見にも消化不良が残った。15日にスペイン当局から告発される節目を迎えた。告発以降、協会幹部で取材対応したのは、日本協会副会長を務める村井Jリーグチェアマンが16日に「(起訴などになれば)日本協会も毅然(きぜん)とした態度を取ると思う」と話したのみ。原専務理事は「(告発が)受理される可能性は十分あると思う」ともう1段階進むことを考慮しながら「あらゆることに対応できるように。いろいろな状況を考えながらやっている」と、最悪も想定しながら協会内で協議していることを明かしたが、具体的なケースについては明言を避けた。

 仮に、アジア杯期間中に告発が受理され、バレンシア裁判所から呼び出されたケースを問われると「すぐに呼び出されるのか、(出頭時期での)要望が聞き入れられるのか、詳しい人から情報を仕入れている段階」と繰り返した。

 疑惑を告発された監督が日本代表を指揮することに、報道陣から「恥ではないか?」と問われると「本当かどうか分からないことを決めつけていいのでしょうか。迷惑、心配をかけたことは申し訳ないが、現段階で恥というのはちょっと違う」と反論。原専務理事が交渉し、招聘(しょうへい)が決まっただけに、気遣いも見せた。

 アギーレ監督は自らの言葉で説明する機会を求めたという。会見の可能性はあるが「タイミングは考えたい。逃げているわけではない」とした。疑惑発覚後の協会の対応にも「いろいろな人が、いろいろなことを話すと混乱する。間違いのない情報を出そうということだった」と釈明した。日本中の耳目を集めた会見は、理事会の機能が問われ、危機管理の甘さも浮き彫りとなった。【高橋悟史】