<アギーレ問題こう思う(3):セルジオ越後氏が日本協会に疑問呈す>

 連載「アギーレ問題

 こう思う」の第3回は、日刊スポーツ評論家のセルジオ越後氏(69)。アギーレ監督の処遇を判断するのは簡単だと言い切り、その上でそれができない日本協会の組織について疑問を呈した。

 アギーレ問題って、一般の会社のトップが見たら「何でこんな簡単なことが問題になっているんだ」という感じだと思うよ。グレー状態のアギーレ監督を、切るべきか、切らざるべきか。協会関係者は自分が責任を取りたくないから、判断を先延ばし。記者会見なども周囲から言われて初めてセッティングする対応の遅さで、「スポーツの組織ってこんなもんなんだな」ってバカにされてると思うよ。

 アギーレ監督をどうするのかなんて簡単なんだよ。基本的には裁判の結果によって判断するのが望ましいとは思う。ただ、結果が出るのはずいぶん先になりそうだ。それなら法律によってではなく、日本協会が裁かなければならない。スペインの裁判所から、アギーレ監督が召喚されるケースもあると思う。そうなれば契約書に定めた通りの日程、内容で指導はできなくなってくる。もうその時点で協会に「切る権利」はあるんだ。

 スペインの裁判所は、日本のサッカー界のスケジュールには合わせてくれないよ。出頭しなさいと言われたら、アギーレ監督は本当に行くのだろうか。そして協会はそれを静観するだけなのか。だとしたらずいぶん優しい協会だな。でも、裁判中の監督を雇うっていうのは、組織的にいかがなものかな。アギーレ監督を解任し、彼を呼んできた張本人である協会の原専務理事が「私が責任を取る」と言って男らしくポストを辞すればいいんだよ。その方がよっぽど好感を持たれるし、スポンサーへの配慮にもなる。

 そもそも協会は、アギーレ監督の就任を急ぎすぎたと思う。W杯ブラジル大会で惨敗し、その責任を追及される前に、早く次の話題が欲しかったのだろう。ほとんど「なぜW杯で負けたのか」という検証がなされないまま、就任が発表された。しかも原専務理事(当時強化担当技術委員長)がほぼ1人で決めたようなもの。まともな組織ではあり得ないことだよ。

 2つの男子トップリーグが統合できず、国際試合出場停止処分を科せられたバスケットボールは、あれだけ国際バスケットボール協会から圧力をかけられても、解決に近づくことができない。でもサッカー協会だって、一般の企業からすれば非常識なことがまかり通る組織なんだ。スポーツ界がこんな状態の日本に、2020年東京五輪を開催する資格があるのか、という話にまで発展する可能性だってあると思う。(日刊スポーツ評論家)